毒性についての基礎知識
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Researcher
- 七海 里枝
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研究員 2008年入社
管理課
大学では木材害虫および森林昆虫を専攻し、菌食性昆虫の生態研究を行う。 2008年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 シロアリをテーマとした漫画を執筆し、(公社)日本しろあり対策協会の展示会に出展協力など、異色の経歴を持つ。
interview連日暑い日が続いていますね。
皆様も熱中症予防のために色々な対策を実践していることと思います。私は先日普段買わないメーカーの塩タブレットを食べた時、まるで大きな塩の塊を口に含んだような感覚に「これは塩分不足に陥っていない時に食べてはいけないものだ」と逆に危機感を覚えました。このように過剰に摂取すると却って体に悪い影響を及ぼすものが存在します。
今回は体に悪い影響を及ぼす性質、つまり毒性のお話です。
シロアリ駆除に使う薬剤への不安
家にシロアリの被害が出て、いざシロアリの駆除工事をすることになったとき、いろいろな不安や疑問を感じると思います。そのなかの一つに挙がるのが「薬剤の安全性」ではないでしょうか。「これから使われる薬剤は安全なのか」という不安です。
では、安全な薬剤とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。薬剤の毒性はどこで確認できるのでしょうか。この記事では、そうしたシロアリ駆除に使われる薬剤に限らず、世の中にたくさんある薬剤の毒性にまつわる基礎知識をご紹介したいと思います。
今回の記事を読んで、薬剤の毒性とはなにかを理解し、むやみに不安になることなく「工事をするべきか、しないべきか」を正しく判断できるようになる一助になれば幸いです。
※記事の内容が毒に関することなので、ネガティブなワードが沢山出てきます。
毒性とはなにか
毒性とは、「ある物質が生物に有害な影響を与える可能性のある性質・その強さ」のことです。毒性には長期間継続して摂取することで現れる慢性毒性と、1回の摂取によって現れる急性毒性があります。
そして中毒とは、その物質を摂取した際に毒性の影響が現れることをいいます。
注意するべきなのは、私達が日常で使用している様々なものにも毒性を持つものがあること、毒性がない(あるいは非常に低い)ものでも多量に摂取すれば中毒症状が現れるということです。
「あらゆる物質は毒であり、毒のないものは存在しない。毒になるか薬になるかはその用量による」という、スイス医学者であり錬金術師でもあるパラケルススの言葉は、このことを端的に示す至言でしょう。
例えば食塩は体重50kgの人が一度に150g摂取すると、50%の確率で死に至るリスクがあります。また水自体は毒性が非常に低いものですが、大量に摂取すれば水中毒となります。
その物質が安全か否かを考えるとき「毒性の強さ」と「摂取してもよい量」を確認する必要があるのです。
毒性を表す指標
その薬剤が持つ毒性の強さを表す指標として「LD50」があります。日本語に訳すと「半数致死量」となり、1回の投与で実験動物1グループのうち 50%が死亡するであろうと予想される薬剤量を指します。
例えば、ある薬剤Aの有害性情報の欄に「LD50 >2000mg/kg 」と書かれていたとします。
その場合1kgの生き物が1群いたとして、その生き物たちに2000mgずつ接種させたとき、その1群の中の50%が死に至ると考えられる程度の毒性、と読むことができます。
生き物の大きさが変われば薬剤量も変わりますので、仮にこの薬剤Aを50kgの人間が接種した場合のLD50は100gとなります。
不等号(>)の右側の数値がより小さい場合、少ない量で強い効果を発揮するということなので、毒性はより強いということになります。
また、似たような指標として「LC50(半数致死濃度)」があり、これはガスや水に溶けた状態での毒性を示していて、魚毒性(=魚に対する影響の強さ)を示す時などに使われます。
毒物と劇物の違い
危険な薬物を表現するときに「毒物」「劇物」といった単語がありますが、これは毒性の強さによって呼び名が決まっており、その薬剤を口から摂取した場合、毒物に分類されるのはLD50 が50mg/kg以下のもの、劇薬は50mg/kgより大きく300mg/kg以下のものとなります。
300mg/kgより大きいものは、毒物でも劇物でもないという意味で「普通物」という区分になり、2000 mg/kg以上になると一般的に毒性は弱いと判断されます。
なお、薬剤の中には原液で使用されるものと水で希釈してから使用するものがあります。希釈されて濃度が下がれば毒性も下がります。
パンフレットや安全データシート(SDS)を確認する
ではそのLD50はどこで確認すればよいのでしょうか。薬剤のパンフレットに記載されている場合もありますし、「安全データシート」で確認することも可能です。安全データシートとは、化学物質の性質や危険性、適切な取り扱い方法などの情報がまとまっている文書です。日本では、毒物及び劇物取締法で毒物・劇物に指定されている薬剤は全てこのシートが作成されています。
数値では測れないリスクもある
ここまで薬剤の毒性の調べ方、読み方を書いてきましたが、実際は薬剤に触れる方の体質や体調などLD50の数値だけでは判断できないこともあります。データとしての安全性を確認した上で、最終的にはご家族の様子など状況を踏まえた上で判断するのが適切です。
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