シロアリ駆除・シロアリ対策のDIYは可能か?

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Researcher

研究者プロフィール
橋本 実樹

研究員 2007年入社

DX 推進室 専任課長

埼玉県で初のクマゼミの採集実績あり。大学では昆虫類、主にセミ類の分布調査に携わる。 2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。熱海起雲閣で床下ロボット調査、代々木能舞台や国際子ども図書館の駆除など経験。 趣味はハチや魚類の採集、飼育。

interview

シロアリ駆除はDIYできます、ただし・・・

今回のテーマは、お客様からいただくご質問の中でも比較的多い、


シロアリ駆除(予防)ってDIYできないの?
というご質問に関する記事です。

結論から申し上げると、

時間と手間をかければ「ある程度は」出来ます!
そして業者に依頼するよりは施工費用自体は安く、半額程度で済みます。

但し!一旦以下の記事をすべて読んでみて頂きたく思います。
DIYのメリット・デメリットがそれぞれあるからです。

一通り読んでいただいた上で、ご理解、ご納得いただける方は実践されてみても良いかと思います。

逆に、以下の内容で難しそうと感じたら専門業者へ依頼しましょう。

それでは、いきましょう!

DIYにおけるメリット

1.費用が安い
DIYすることによる一番のメリットはやはり「費用の安さ」でしょう。
自身が行うことにより、専門業者による手間賃(諸経費・人件費)がかかりませんので、その分安く済むことはメリットです。
ただし、それなりの時間はかかります。
施工自体に丸一日程度
必要な道具を揃え、薬剤を購入する時間も考慮すると丸2日程度の時間は見たほうが良いです。

2.家の床下点検が自分でできるようになる(点検スキルが身につく)
自身で行うことにより、家の床下点検が自分でできるようになることはメリットと言っても良いでしょう。
定期的に床下に潜ることにより、薬剤を散布しなくてもシロアリ被害を未然に防ぐこともある程度は可能です。

但し、被害を見つけるにはシロアリの生態を理解しているという前提条件がある程度必要になってきます。

ちなみに、私が認める「シロアリのプロ」は、匂いや感触等で判断することも多いです。

要は「感覚」になってしまうのですが、この感覚をもっていないとどこが怪しいとかどこに被害があるとか正確に見抜くことは難しいかもしれません。

なお、この感覚は昆虫好きの人間だとすぐに身につけられることが多いように感じます。
なんでもそうですが、好きだからこそ身に付けられるものって、ありますよね。
私自身、新人の頃から害虫駆除が得意だったのもそのせいだと思います。

私の思い込みかもしれませんが、この「感覚」に関してはシロアリ防除業者でも身につけられている人は少数ではないかと思っています。逆に経験が浅くても「昆虫好きな人」であればすんなりと身につけられるものだとも思います。

我々白蟻専科のメンバーの様に昆虫好きの方であれば、すぐに共感していただける可能性もありますね(笑)結論、少なくとも未経験の方でこのレベルの点検をすることは困難です。

少しでも怪しいと思ったら専門業者へ依頼するのも一つの手です。

DIYにおけるデメリット

1.保証がつかない、何がおきても自己責任
専門業者が施工した場合は5年以上の保証をつけることがほとんどです。
自分で施工した場合に保証は付きません。施工後に被害がまた発生したら自分で再度処理する必要があります。

2.必ず汚れる、濡れる可能性もある
床下での作業は必ず汚れますし、それも私の体験談で言うと想像以上に汚れます。床下の空間はたとえ土壌がむき出しでない、コンクリート仕上げであっても入ってみればホコリだらけであり、着ているものが汚れますのでつなぎの着用が前提となります。どちらかというと床下がコンクリートじゃなく土壌むき出しの方が湿度があるのでホコリが舞いにくいという特徴があります。

3.レンタル等で道具を揃える必要がある
薬剤使用量については後述しますが公益財団法人日本しろあり対策協会の基準によると、1階床面積が50㎡の想定でも150L以上の薬剤散布が必要となりますので、それなりの容量のタンクと噴霧器が必要となります。よくホームセンター等で売っている数リットルほどの手押しの噴霧器を使うと書かれているDIYサイトもありますが、プロ推奨の施工方法では、容量もそうですが注入する為の圧力も不足しています。きちんとした道具をレンタルして使いましょう。

4.ムカデ、ゴキブリ、カマドウマ等、生き物との遭遇確率が高い
床下環境は屋外と比較するとジメジメしており湿度が高く暗い状態です。そういった環境を好む生物と遭遇する可能性は必然的に高くなります。コンクリートの床下であってもゴキブリやカマドウマ等との遭遇確率は室内と比較すると圧倒的に高いです。
ですので、昆虫がそもそも苦手という方は床下に入らないほうが無難です。

その他、土壌や土壌の上の防湿シートなどが敷いてある場合は、カエルや蛇などと遭遇する可能性もあります。

5.配管・配線などの損壊をするリスク
床下は基本的に寝返りが打てない様な狭くて動きづらい環境であり、なおかつ配管や配線が通っている建物も多くあります。
ふとした不注意で破損させてしまう可能性もあります。業者の方がやってしまった場合はもちろん修理してもらえますが、自分でやってしまった場合は自己負担で治すしかありません。床下での動きに慣れていない方は、そういったリスクも高まります。

6.怪我の可能性
床下は日常的に人が通ることを想定した造りになっていないため、どんな建物でも基本的に室内より仕上げが雑です。物件によっては木材部分から釘などが飛び出ていることもよくあり、そういった突起物に刺さって怪我をすることがあります。少なくとも保護帽は必須です。

7.ペットに注意が必要(主に魚類や昆虫類)
シロアリ用の薬剤の殺虫成分は我々人間の様な哺乳類への安全性は高くなっていますが、魚類や昆虫類などに関しては強い毒性を示します。事前にこれらを隔離・養生して薬剤を暴露しないようにする配慮が必要です。

もちろん犬猫の場合も点検中や施工中は床下に入らないようにするための工夫が必要です。

DIYが難しいケース

1.施工(予定)者が閉所恐怖症である
床下は閉鎖空間であり、まずご自身が閉鎖空間にいても問題ないかどうかを確かめましょう。
閉所恐怖症の方は床下でのシロアリ点検及び施工は出来ない可能性が高いです。

2.施工(予定)者やご家族が化学物質過敏症である
トイレの芳香剤、ヘアスプレーなどでアレルギー反応が出たり気持ち悪くなってしまう方は、
現在のシロアリ用薬剤は殆ど揮発しませんが、それでも若干の蒸発はありますのでそういった場合は液剤施工によるシロアリ対策はおすすめしておりません。その場合は、建物外周部に設置するベイト工法などを検討しましょう。

3.床下点検口がない場合
基本的に床下に進入する際は床下点検口から入りますが、入れないと液剤を使ったシロアリ対策自体が難しくなります。
建物によってはそもそも点検口が存在しないケースがあり、その場合は電動丸のこなどで畳の下のベニヤ板(合板)をカットしたり、洋室のみの場合はフローリングをカットしたりして点検口作成が必要になります。

なお、点検口作成にあたっては危険を伴う作業でもあり、ご自身で丸のこ作業に慣れていない限りは、専門業者を手配するのが無難です。※手動のこぎりでも時間をかければ点検口作成は可能です。

4.被害がある場合
床下点検をまず行ってみて、シロアリの被害があった場合、シロアリの生態を理解していないと、その範囲を正確に特定できずに的はずれな施工を行ってしまう可能性があります。

被害部が目視できる状態であり、なおかつ土台の表面を舐めるくらいの軽度の被害であれば別ですが、
予防でなく被害のある「駆除」となってくると、経験者でないと判断及び施工は難しいのが正直なところです。
我々専門業者でさえ、少なくとも最低でも1年以上は経験した上で駆除を1人で任されるようになりますので、未経験の方には相当ハードルが高くなります。

実際にDIYする方法

なお、下記の道具や薬剤が既にある場合には点検と同時に施工も可能ですが、その場合は床下部分に木材の露出部が無いかだけ確認しておき、あれば木部処理剤と土壌処理剤を、なければ土壌処理剤のみ購入しましょう。

なお、床下に入る場合は必ず2人ペアで1人は床上にいる状態で行ってください。
床下点検口が開けた状態になりますので、転倒防止のためや
1人だと床下での怪我や体調不良の際などの対応ができなくなってしまいます。

1.点検に必要な道具をそろえる
①マスカーテープ:床下や作業者から舞うホコリの飛散を防ぎます
②養生テープ:養生シートをつなぎ合わせたりするときに使います
③養生シート:紙製のシートで、通路にしいて泥やホコリで汚れないようにします。
④はさみ:養生シートやマスカーテープを切って調整するのに使います
⑤つなぎ:作業時に着用します(ホコリの侵入がし易いので、専門業者は施工時にかっぱを着たり、つなぎを2重で着たりします)
⑥ゴム手袋:作業時の怪我防止のためのもの
⑦保護帽子:作業時の怪我防止のためのもの
⑧防毒マスク(防じんマスク):作業時に粉塵や薬剤を吸い込まないようにするためのもの
⑨懐中電灯(ヘッドライト):床下(暗闇)で作業するために必要、点検時はハンドライトでも良いが施工時はヘッドライトを推奨。
⑩図面を印刷したもの(なければ方眼紙):被害状況や通路などを記録する
⑪メモ用の紙とペン:同上

2.床下点検を行う
まず、①~④を使い点検口周辺の養生をしたうえで⑤~⑨を着用し、懐中電灯とメモ用紙をもって床下に入ります。
養生の際に汚れることもありますので、つなぎは作業を始める前から来ていたほうが無難です。
図面にそって隅々まで移動しながら異常がないかどうかをチェックします。
被害や腐れなど、異常があれば、その状況を図面に書き込みます。
※図面がない場合は方眼紙に書いてから床下に入りましょう。図面の書き方まではここでは言及しません。

3.床下点検の結果に応じて薬剤購入・機材のレンタル
薬剤自体はネットショッピングなどで買うことができます。
基本的には土壌処理剤と木部処理剤の2種類となりますが、床下空間に木部が露出していない場合などは土壌処理剤のみで大丈夫です。

土壌処理剤:希釈液した液体を土壌表面に散布するもので、殺虫成分が含まれています。土壌を経由して外部から侵入しようとするシロアリを防ぐ役割があります。有効成分の性質により、忌避性のあるものと無いものがありますが、予防に関しては効果は同じと考えていただいて結構です。

木部処理剤:床下の木材部に散布するもので、土壌処理剤の殺虫成分に加えて木材の防腐効果のある成分も含まれています。
それと業務用の噴霧器、家の大きさにもよりますが十分な大きさの薬剤希釈用タンクをレンタルしましょう。

4.施工前の養生
床下での作業になりますが、薬剤の切り替えをするためにタンクと点検口を行き来する必要があります。
床下がコンクリートの場合はホコリだらけになるうえにかなりの粉塵が舞いますし、土壌の場合はつなぎが泥だらけになりますので養生は必須です。
・点検口周りのホコリが気になる部位にマスカーテープで壁ごとカバー
・薬剤タンクとの間を行き来するための通路に養生シート

5.薬剤を希釈し、専用機材にて必要箇所に処理する
【土壌処理】
いずれも希釈後の液体量になりますが(公社)日本しろあり対策協会の仕様では、
基礎際から1メートル幅の範囲に関しては長さ1mあたり1リットルの量を散布します。
それ以外の土壌面については、1㎡あたり3リットルの量を散布します。

【木部処理】
土台や大引きなどの主要な材を中心に木部処理剤を表面散布します。
希釈後の液体量で、㎡あたり0.3リットルを目安にしてください。

如何でしたでしょうか、以上がシロアリ駆除をDIYで行うための解説でした。
結構時間がかかる上に慣れも必要な作業ということが感じられたのではないでしょうか?

もしこの条件を踏まえつつ、ご自身でシロアリ予防工事をやってみたいという方は、是非やってみては如何でしょうか。

私の主観ですが、予防という観点であれば、一つ一つ丁寧に時間をかけてやればこなせる作業だと思います。

但し、被害が既にあり、駆除工事ということになると、まず前提としてのシロアリの生態の知識や現場での感覚が必要になるので、あまりおすすめはしません。

点検したら被害があったり、やってみてやっぱり難しいから業者に依頼する・・・でも良いと思います!

以上、ご興味があれば、DIYを検討してみてくださいね。

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