専科グッズ部、シロアリの刺繍を作るの巻
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Researcher
- 七海 里枝
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研究員 2008年入社
管理課
大学では木材害虫および森林昆虫を専攻し、菌食性昆虫の生態研究を行う。 2008年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 シロアリをテーマとした漫画を執筆し、(公社)日本しろあり対策協会の展示会に出展協力など、異色の経歴を持つ。
interview専科グッズ部とは、七海が勝手に作ったシロアリのグッズを作る部です。
世の中を見渡すと、シロアリをモチーフにした雑貨のなんと少ないことでしょう。まあ少し考えたらわかるというか、害虫というイメージに加えてデザインとしてあまりグッズ向きじゃないからだと思いますが。
そう、シロアリの見た目は非常にシンプル…アゲハチョウやてんとう虫のような「色の映え」もなく、カブトムシやカマキリのような「形の映え」もない。パンでいうと丸パンのような味わい深い素朴なフォルム。
逆に言えばシルエットを非常に簡略化させることができる、色が白一色で表現できるという点で私のような素人でもグッズとして成立するものが作れるのではないか…?
さらにいえば、良きグッズにすることで世の中のシロアリ=害虫というイメージをほんの少しでも変えることができるのでは…?
そんなわけでシロアリのグッズを作ります。手始めに刺繍を。なぜなら刺繍をしたことがないから。生まれて初めての刺繍がシロアリ、そういう人生も良いでしょう。
材料
- 刺繍をする布
- 刺繍糸
- 刺繍針
- チャコペーパー
- トレーサー
- 刺繍枠
ユザワヤに行って買ってきました。刺繍糸や刺繍布は、図案などが一式揃っている初心者用キットに入っていたものを使用します。チャコペーパーって知らなかったんですが、カーボン紙みたいに図案を布に転写するものなんですね。家庭科の授業で使ったチャコペンよりも使いやすそう。
家庭科…家庭科…
そういえば学生時代は家庭科の成績が5段階で2だったことを思い出しました。ミシンの針を曲げたり下糸をむちゃくちゃにしたりすることには定評があります。ですが今回はミシンではなく手作業による刺繍ですからいけるでしょう。結果がどうあれ一つの経験。そこには何かが残るはず。なんとかなれ~
図案
あらかじめ作っておいた図案がこちらになります。
シロアリの触角はよく数珠状と表現されますが、これをビーズで表現しようという算段です。艶のある糸でシロアリ体表の光沢が表現できればなお良し。実寸で作るのは難易度が高すぎるので手のひらサイズで作ります。かわいいですね。
チャコペーパーで図案を転写。今思えばもっと濃い目に転写すればよかった
いざ刺繍 ~早速の妥協~
黒い布に刺していきます。輪っかをつけるとだいぶ刺繍してる感が出て盛り上がります。
3針差したところで「このまま進めるのはまずい」と思いました。
元々の図案では輪郭線をサテンステッチ(糸を平行に刺し続けて線や面を表現する刺し方)で仕上げようと思っていたのですが、刺繍スキル0の私では間違いなく線がガタガタになる……。
そのため早々にサテンステッチを諦め、より簡単なバックステッチで輪郭線を作っていくことにしました。
結局ガタガタになりました。シロアリの行列みたい。
その後もyoutubeで刺し方の動画を観ながら進めていきます。
サテンステッチで輪郭線のなかに色を付け……。
アウトラインステッチで脚を作る……。
そしてビーズで触角を表現。なにかが出来てきました。
刺繍完成
ん、んん~~~~~~
シロアリ…か……?
私はシロアリと思って縫ったのでわかりますが、第三者が見てもこれをシロアリと認識してもらえるかわからない…。なぜだろう、目がなくて生き物感がないからでしょうか。
でもこれはヤマトシロアリの職蟻のイメージだし…ヤマトシロアリの職蟻の目は退化してるし……。
冒頭で書いた「シンプルなフォルム」とはイコール「これは●●だと明瞭に判別できるポイントがない」ということだと気づきました。
何はともあれシロアリ(のようなもの)の刺繍ができました。しかしこのままではあくまで刺繍の入った布。ここからグッズ(ブローチ)を錬成します。刺繍の裏に接着剤を塗り、フェルトに接着。金具を縫い付けたスエードと接着すればブローチになるはず。
ここからが大変でした。
スエードに針が通らない。そして端をかがり縫いしていくうちに刺繍布がどんどん解けていきます。せっかく作った刺繍が分解しちゃう。たすけて
できた…
絵に描いたような「初めて刺繍する人が作った刺繍ブローチ」ができたな……。
何はともあれこの世にシロアリの刺繍ブローチが誕生しました。これで日々の生活にシロアリ(ヤマトシロアリ職蟻)がどこでもいっしょ。刺繍レベル1の人が作った第一号としては実に妥当な仕上がりではないでしょうか。あと数回同じものを作ったらだいぶ上達する気がする。
着こなし例。お母さんあのひと服にシロアリつけてる。
制服にもさりげなくシロアリを添えて。
実際に手を動かし作ってみることでわかるものがあります。
私は今回のチャレンジにおいて、刺繍とは「針と糸と布との対話」であると実感しましたし、モチーフとしてのシロアリの面白さ・奥深さを知ることができました。
今後もシロアリのグッズを世に生み出し、私自身もグッズ制作の中でシロアリという生き物への理解をより深めることができればと思います。
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