先輩のお金で食べる虫はうまいか?昆虫料理グルメレポ
- 昆虫食
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Researcher
- 七海 里枝
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研究員 2008年入社
管理課
大学では木材害虫および森林昆虫を専攻し、菌食性昆虫の生態研究を行う。 2008年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 シロアリをテーマとした漫画を執筆し、(公社)日本しろあり対策協会の展示会に出展協力など、異色の経歴を持つ。
interviewはじめに
7月某日、専科スタッフの田中さんが不動産関係の情報を発信している「楽待チャンネル」様より取材を受け、YouTubeの動画に出演いたしました。後日この出演を祝し、田中さんは会社より打ち上げ費用のご褒美を頂きました。
田中さんは橋本さんとともに「せっかくなので昆虫食の専門店で打ち上げをしよう」と決め、なんと私七海も撮影担当の名目でご一緒させていただくことに。最初は驚きましたがこんな機会はめったにありません。人生はじめて、かつ先輩のお金で食べる虫は果たしてうまいのか?
昆虫食に造詣の深い先輩2人+ビギナー1人の、昆虫料理グルメレポのスタートです。
※この記事では虫や獣が料理された写真がほぼモザイク無しで多数掲載されています。苦手な方はここで引き返し、見たい方はワクワクしながらお読み下さい。
今回お世話になったお店
米とサーカス 高田馬場本店
渋谷のパルコ内にも店舗を持つ、その道の人には有名なお店です。様々な漫画作品と積極的にコラボしているため、そうした作品経由で名前を知っている方も多いかもしれませんね。
メンバー
橋本さん
特技はラーメン作り シロアリラーメンの開発を試行錯誤しています。
昆虫食歴は子供の頃からだそうです。
田中さん
ついこの前シロアリ食べたばかりなのにまた昆虫食のレポに参加。
こちらも昆虫食歴は子供の頃から。家にハチの巣ができた時は必ず食べていたとのこと。
七海
この記事を書いた人。昆虫料理もジビエ料理もモツ料理も食べない家庭で育ちました。
爬虫類なら食べてみたい心持ち。
俺らは大丈夫だよ虫食い慣れてるから
お店の立地は高田馬場駅から歩いてすぐ。全体的にしっかりしたコンセプトを元にデザインされている印象です。エキゾチックな佇まいでかわいい感じ。私達より先に数グループが入店していて賑やかでした。
たくさんのメニューの中から超上級者向けと記載がされた「昆虫10種食べ比べセット」ほか数点をチョイス。メニューの端にはしっかりと食物アレルギーに関する注意喚起が記載されていました。
※昆虫には体質・体調により食物アレルギーを発症するリスクがあります。
俺らは大丈夫だよ虫食い慣れてるから
頼もしい限りです。
実食~大体うまい~
お通しはスズメの丸焼き
メニューを見ながら「ミルワームは後味が独特」「ダチョウはくさい」といった話をしているうちにお通しが登場。頭から足先まで丸ごと食べられます。
そのまますぎる感想ですが、歯ごたえのある鳥の味。
足が一番うまい
タガメサイダー
タガメサイダーとは、タガメのエキスを使用したサイダー。タガメのにおいが忠実に再現されているのだそうです。
におい嗅いでみて
えっ あ、すごい。本当に青りんごの匂い。虫の匂いとは思えない。
考えてみるとタガメはカメムシ目。あの特徴的な臭気を発するカメムシ類と近縁なのであれば、何かしらの匂いを発するのも納得できるような気がします。
ナマズの唐揚げ
おいしい。口の中でトロトロ溶けていく感じ。最後にちょっと土の味がする。
確かに。後味は川魚の風味だね。
ここで昆虫10種盛りに「カブトムシの姿揚げ」「オオグソクムシの姿揚げ」「セミの親子串」が載ったお皿が登場。テーブルが一気に賑やかになります。
外骨格だよ全員集合(クリックで拡大表示します)
それでは実食!
カブトムシの姿揚げ
カブトムシ硬ッ
海外産のカブトムシかと思いきや、見慣れた日本のカブトムシです。夏の風物詩のお味はいかに。
・・・・・。
これね、カブトムシそのもののにおい。飼育ケースの土食ったみたいな味。
やっぱりカブトムシの幼虫は土を食べるから、土の味がもろに出ちゃうんだよな。クワガタの幼虫は朽木を食べるからもっとおいしい。
セミの親子串(成虫・幼虫・抜け殻の三種串)
続きましてはセミの成虫・幼虫・抜け殻が串揚げになった親子串。
カブトムシよりはるかにうまい。
セミはうまいよ。これはオスかな…?(雄雌を判別している)
昆虫食ビギナーの七海、前哨戦として抜け殻を頂きました。味がなんとなく想像できるので。
うん…。
想像した通りの…揚げたエビの端っこ食べたみたいな味…「無」って感じ…。
抜け殻だからね。
セミの幼虫は中がつまってる茹でたエビという感じ。外骨格部分じゃなくてちゃんと中身を食べてる感じが他の虫とは一線を画してる。
マゴット(ハエの幼虫)
白いのがマゴット(クリックで拡大表示します)
揚げ方が上手い。こんなに小さいのにプチプチ感が残ってる。
生(なま)感がある。うまい。
ナマ感…?
おケラ
これはうまいわ。
うん、初心者むけな味がする。七海さん食べてみたら?
初心者向けと言うならいけるかも…七海、人生初のガチの昆虫食、いきます。
お命頂戴!!(?)
どう?
フライドポテト…入れ物の底の方にある油吸いすぎたフライドポテトの味。割と好きな味がします。
クセがなく、舌に残らず消えていく後味。「初心者向け」という言葉の意味がわかりました。
そして揚げ物になってもおケラはかわいい
オオグソクムシの姿揚げ
地上ではなく深海に生息しているオオグソクムシ。虫というよりほぼ甲殻類では?
ほぼというか、甲殻類だね。味もエビに近い。
ハサミで割って中身を掻き出して食べる光景もほぼカニ・エビと同じ。
おケラでだいぶ抵抗感が緩和されたので端っこをいただきました。
食べたことないけど…シャコを食べたらこんな感じの味がするかもしれない、という味がします。実際に食べたら全然違うのかもしれませんが。
痛っ グソクムシが指に刺さった!
陸上で生きててグソクムシが指に刺さることってあるんだ…。
タガメ
お皿の上でひときわ存在感を放っていたタガメ。
店員さんがあらかじめタガメの解体の仕方が書かれた説明書を置いていってくれました。まずは羽をひらいてお尻の先を…
うわーーーー!!!
上級者の二人には説明書など不要!
レモングラスとかハーブの匂い。タイでサラダの中にいれるのもわかるな。でも匂いが強すぎてタガメ食べる時に使った箸はもう使えないわ。食べるものが全部タガメになっちゃう。
蜂の子の甘露煮
これはポピュラー。長野では高級食材なんだよね。
小さすぎて虫食べてる感がない。蜂の子ってもっと大きいものかと思っていましたが…。私が食べてるのは本当に虫…?
それはオオスズメバチの幼虫のイメージが強いんじゃない?地蜂は小さいよ。
今回のメニューで人気だったのはおケラとセミの幼虫でした。
その他のいろいろな虫もうまいうまいと言いながらどんどん食べていくお二人。
店内に流れる懐メロが染みます。
♪天城~~~越~え~~~
ジビエもいただきました
米とサーカスはジビエ料理も有名。せっかくなのでいろいろなジビエ料理もいただきました。
クマ鍋+アナグマ鍋
癖があるけど、癖がないとジビエじゃないからね。
うまみがあるのはアナグマのほうかな。
クマ肉とアナグマ肉、口にいれるとはっきりわかるものですね。
カンガルーのたたき
うまい。ほぼクジラ肉。
クジラ食べたことないけどうまいのはわかります。
あまみがあってくせがない。
燻製4種盛り
ワニ舌は柔らかくてぷりぷりしてる。意外。
全部おいしい。猪が一番おいしい。
イノシシって味の濃い豚みたいなもんだからね。
いやあたくさん食べました。
ところでこの「戦場で食べた蟻」(メニュー名)は食べないんですか?白蟻専科なのに…。
すっぱいって書いてある。すっぱいってことはシロアリじゃないんじゃない?
でもメニューにはタイ産シロアリって…。
いや、シロアリですっぱいのはありえないでしょ。
か、頑なに食べない……なんだこの自信は……。
(最後まで食べませんでした)
まとめ
- 虫は食べやすいものは食べやすく、食べにくいものは食べにくい
- 虫の臭みは食べてるものの臭み。何を食べているかで食べやすさが違う
- 昆虫食に対する考え方は育ってきた環境の習慣(家庭ひいては土地柄)によって形成される
まずタイトルにした「虫はうまいか?」という点については「おいしいものはおいしい」「食べやすいものと食べにくいものがある」という、魚など他の食材にも共通する感想となりました。
今回自分でも昆虫を食べてみて、味以上に考えていたのは「なぜ昆虫という食材が現在の日本においてニッチなのか」ということでした。昆虫そのものに抵抗感がないところは共通していながら、眼の前でモリモリ食べ進める二人の先輩の人生と、私の人生のルート分岐はどこだったのか?
前述の通り私はこれまでの人生で、昆虫料理を食べる機会がありませんでしたが、それは
- 地域にそういった料理を提供する飲食店がなかった
- 両親がそうした料理を好まず、家庭でも食べる機会がなかった
この2つの要因により「食材としての昆虫」という価値観が育たなかったからではないかと考えます。
現在ある生活環境を変える、すなわち昆虫料理に接する機会を増やすことが日本の昆虫食普及には必要なんだろうと思います。特に家庭で日常的に食卓に置かれるかどうかが重要で、そうなると手軽に食材として手に入るかどうか、という点も考える必要があります。
考えてみると、納豆は全国の量販店で購入でき、日常的に消費されている食品ですが、もし接する機会がもっと極端に少なければ、「珍味」や「郷土料理」と言われても不思議ではないように思います。今回の打ち上げで「食は文化なり」という言葉を深く考えるきっかけをもらいました。
ごちそうさまでした!
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