よくわかる!一般的なシロアリ駆除の流れ

  • シロアリ駆除

Researcher

研究者プロフィール
田口 正訓

研究員 2007年入社

埼玉営業所テクニカルチーム

大学では在来草本植物の研究に携わり、自然環境と生物の相互関係を学ぶ。 2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。 休日も生き物や植物の写真撮影に勤しむ。

interview

はじめに

スマートフォンで、シロアリで検索をかけると、関連ワードで第一に駆除という言葉が浮上します。

それだけ、シロアリ=駆除というイメージが世間一般に定着しています。

そもそも、駆除という言葉の定義は何でしょうか?

駆除とは、人間にとって害になるものを追い払い、また殺して取り除く事を指します。現代では、主に害虫を退治することを指します。

では、なぜシロアリが駆除の対象になるのでしょうか?

答えは、建物を支える柱、構造材、内装材、家具等に食害を及ぼし、建物の耐震性能や資産価値を大きく下げてしまうからです。

シロアリは、野生下では枯木、倒木を食糧にして生きています。実はシロアリがいる事で枯木を土に還し、森林の生態系を正常に保つという大きな役割を果たしています。自然界には必要不可欠な生き物なのです。

ちょっと待って、これでは、シロアリの肩を持っている、シロアリの味方なんじゃないかという声が出てきそうですが、正しい知識を持って接することが大事だと思っております。

もちろん、シロアリはお客様の大切な資産を奪う害虫です。仕事中は、心を鬼にして、駆除します。

では、ここから、本題のシロアリ駆除について、具体的に掘り下げていきます。

駆除する前の調査

まずは、駆除する前の調査が重要です。

お客様に「どこが被害に遭っているか?被害の程度は?羽蟻は目撃したか?いつ頃からか?」といった感じでお尋ねします。そして、その情報を基に、建物内外、床下を点検し、シロアリ被害の有無を確認していきます。

シロアリは土の中に生息している生き物です。主な侵入経路は、建物の床下からがほとんどですが、それ以外の可能性も捨ててはなりません。建物の外周も必ず目視、打診を行います。
建物の調査が完了したら、実際に施工に入っていきます。

シロアリ駆除の方法(薬剤散布)

ここからは、シチュエーション毎での、薬剤散布によるスタンダードな駆除方法についてお話ししていきましょう。

床下の場合

最も多いのが床下の被害です。

シロアリが床下から侵入する場合、基礎や束に、幅1㎝程の細長い土で出来た道、蟻道を構築しますので、まず、蟻道を探します。蟻道を見つけた場合は、その蟻道を崩して、水で規定倍率に希釈した、液状の薬剤を散布します。

蟻道の行き着く先には、大引、土台、根太材、柱があります。その部位と周囲にも被害が及んでいる可能性がありますので、電動ドリルで部材に穴を開け、薬剤を直接注入していきます。そうすることで、部材の中のシロアリを駆除します。

「シロアリの侵入があった床下だけを処理したい、あるいは、被害があった部位だけを駆除して、なるべく費用を抑えたい。被害を見つけて頂いたから、後は自分で市販の殺虫剤を買ってどうにかする。」

お客様からのこんな要望もあるかもしれません。

しかし、それはお勧めしません。なぜなら、被害がある場所だけ駆除しても、意味がないからです。

地下の土は全て繋がっています。部分的に薬剤を散布、注入しても他からシロアリが再度侵入するので、保証をお付けすることも出来ません。

シロアリ駆除は、被害がない床下でも、薬剤を散布し、床下全体の処理を行うのが基本です。床下全体で散布すれば、建物にバリアを張る事が出来、万が一、シロアリが新たに侵入しても、そこで食い止める事が出来ます。

シロアリ駆除は、ただ、現状生息しているシロアリを退治するだけではなく、今後の侵入を阻止する、予防処理を同時に行う事が重要なのです!

浴室の場合

床下に被害がなくても、室内の一部で羽蟻をお客様が目撃し、被害が判明する事例も多々あります。その代表格が浴室です。

在来浴室の多くは、壁内と床がタイル貼りになっています。そのタイルの目地から徐々に水分が浸透し、通し柱、間柱、土台に湿気が伝わり、湿気を好むシロアリを誘引する事になります。

築年数が経過した建物では、蟻害で土台や柱がボロボロなんてことも。

浴室での駆除方法は、床下側では土台に直接薬剤を注入するか、電動ドリルで穴をあけ、注入します。

室内側ではインパクトドライバーでタイル壁の目地に3mmほどの小さな穴をあけ、専用のノズルを使用して薬剤を注入します。

被害が深刻な場合は、床面のタイル目地にもハンマードリルで穴をあけ、薬剤を注入する事もあります。注入後は、タイルの目地の色に合わせたセメントで補修します。

ユニットバスの場合、FRP(繊維強化プラスチック)の壁で覆われている為、建物本体に水分が浸透する事がなくなるので、被害の確率は大きく低下します。もし、予算に余裕がある場合は、在来浴室をユニットバスにリフォームする事をお勧めします。

玄関の場合

浴室の次に被害が出やすいのは、玄関です。玄関は木造住宅に限らず、鉄骨住宅でも被害実例が多く確認されています。なぜでしょうか?

答えは、玄関には多くの木材が使用されているからです。

玄関正面には框と呼ばれる、大きな木材があり、周囲は幅木が設置されています。ドアの両脇には、木製の額縁が設置されている事もあります。それらは土間タイルと接しており、タイル下の土壌から直にシロアリが侵入してくるのです。

玄関は床下から薬剤散布が出来ない場所ですので、ハンマードリルで土間タイル目地に穴をあけ、専用のノズルを装着して、タイル下の土壌に薬剤を注入します。

通常は玄関土間の四隅4か所に穴をあけるのですが、シロアリの侵入具合や、框や幅木の被害の規模によって調整します。

框や幅木に被害が確認された場合は、被害部位に直接注入し、被害が及んでいない箇所にも穴を開け、薬剤を注入し、注入後は木栓やプラスチック栓で補修します。

和室の場合

和室も被害が多い場所と言えます。

和室は床の間、敷居、畳寄せ、化粧柱等、木材が多く使用されています。またシロアリは木材以外のものも食べる習性がありますので、畳が食害に遭う事もあります。

駆除方法は、被害部材に直接薬剤を注入し、近接する部材にもインパクトドライバーで穴をあけ注入し、注入後は木栓で補修をします。畳や畳下の板材に食害が認められる場合は直接、薬剤を吹き付け、広範囲をカバーします。

畳が食害に遭った場合は、交換する事をお勧めします。

その他の場合

近年、建物の断熱性能を向上させるために、布基礎の外側に断熱材を取り付ける住宅、いわゆる外断熱工法の建物が増加しています。この外断熱からの侵入事例もしばしばみられます。

外断熱で使用される素材はスタイロフォームと呼ばれる、ポリスチレン樹脂(プラスチックの一種)なのですが、実はシロアリが食べます。

外断熱工法の場合、床下と異なり、閉鎖的な空間ではないため、薬剤散布による駆除が難しくなります。基本的には工務店に依頼し、外断熱を剝がして薬剤を散布するか、ベイト施工で庭に生息するシロアリを駆除するかになります(ベイト施工については後程詳しく解説します)。

建物を増築した場合も注意が必要です。

増築部は、元々庭だったところに部屋を増設しているわけですから、少々言葉が悪いですが、シロアリの温床の上に建てられている事が想定されるのです。シロアリは土があれば、どこにでも生息しています。

私の経験では、増築部だけ被害に遭っているという物件に何度もうかがってきました。増築の場合、床下が基礎で隔てられ、床下に入れない事も多くあります。その際は床下点検口を新設して、必ず床下に入れる状態にして、薬剤散布を行う事が重要です。

シロアリ駆除の方法(ベイト施工)

ここまで薬剤散布による、スタンダードな駆除方法についてお話ししてきました。

シロアリの薬剤散布=人体に危険?本当に大丈夫?と思っている方もいらっしゃるかと思います。

先に結論を申し上げますと、現在使用されている薬剤は、適切に扱えば安全です!毎日、現場で薬剤を扱っていますが、元気そのものです。

しかし、例外も存在します。それは、お客様が化学物質過敏症と診断された場合です。

安全性が高いとは言え、薬剤ですから、特定の化学物質が含まれています。化学物質過敏症が疑われる場合は、スタンダードな薬剤施工はお勧めできなくなります。

また、どうしても薬剤散布に抵抗がある方もいらっしゃいますし、床下がない、床下が狭すぎて入れない建物等、特殊な構造で薬剤散布が実施出来ない現場も存在します。

そこで、薬剤散布を行わずに駆除できる、ベイト施工が登場します。

ベイト施工とは、ステーションと呼ばれる、シロアリの毒餌が入った専用の容器を建物外周の土壌に均等に埋設していくという方法です。

駐車場等、コンクリートが存在する場合は、専用の工具でコンクリートをくりぬき、ステーションを埋設する事もあります。

毒餌にはシロアリの脱皮を阻害する成分が含まれており、それを食べさせ、巣に持ち帰らせる事で、シロアリを巣ごと全滅させる事が出来ます。

ベイト施工では、薬剤の成分が気化し、室内に侵入するという事もありませんので、化学物質過敏症の方でも安心していただけます。また、ステーションの蓋は、専用の道具がないと取り外す事が出来ないので、お子さんがいたずらで外す事もありませんし、ペットの誤食もありません。

但し、建物の敷地が狭すぎる場合はステーションの設置が出来ない可能性もあります。

以上、シロアリの駆除方法についてお話しさせていただきました。最後までご覧くださり、ありがとうございました。

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