シロアリで真面目にラーメンを作ってみた
- 昆虫食
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Researcher
- 橋本 実樹
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研究員 2007年入社
DX 推進室 専任課長
埼玉県で初のクマゼミの採集実績あり。大学では昆虫類、主にセミ類の分布調査に携わる。 2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。熱海起雲閣で床下ロボット調査、代々木能舞台や国際子ども図書館の駆除など経験。 趣味はハチや魚類の採集、飼育。
interview食材としてのシロアリ
皆さんは「昆虫食」と聞いてどのような印象を受けますか?
我が国でも昆虫食への関心が高まる中で、食材としてはハチ、セミ、バッタ、コオロギなどが有名と認識しておりますが、我々の専門であるシロアリはどうでしょう?
先日も白蟻専科でシロアリを食するチャレンジングな記事が公開されていましたね。
日本ではあまり食されてはいないですが、シロアリ自体は栄養価が高く、アフリカ諸国では現在も重要な食糧となっているそうです。
ええ、今回はその食材としてのシロアリを深堀りしていこうかと思いまして
シロアリでラーメンを作るきっかけ
白蟻専科のメンバーは皆、好奇心旺盛です。
昆虫やジビエ料理に抵抗のないメンバーが過半数で、私もその一人
先日もメンバーが吉祥寺で購入してきた食用のコガネムシやシロアリを会社で試食していたという、素でハードコアな集団であります。
今回の記事はそんなメンバーでの何気ない会話から派生したものです
(シロアリを咀嚼しながら)そういえば、これでラーメン作ったら美味いのかな?
橋本さん、せっかくだからシロアリでラーメン作りましょうよ!
オーケー!
何がせっかくなのかはわかりませんが
必然によって生まれた「シロアリラーメン」
実は私、ラーメン作りが趣味の一つでして。
そして白蟻専科メンバーですから、
シロアリでラーメンを作ってみたいと思うのは必然だったわけです。
そこで、世の中に「シロアリラーメン」というものがないか調べてみたわけですが…
お店はおろか、おそらく「シロアリラーメン」というコンテンツは全く前例が有りません。
※コオロギラーメンは実店舗もあるくらいかなり有名です
まあ・・・前例がないなら作ってしまえばいいわけですよね(日々そのような心意気でおります)
なぜ「シロアリラーメン」は世に存在しないのか
仮説ですがおそらく味云々よりも、以下の2つの理由でしょう。
・そもそも確立された養殖方法がないため、生産量が安定しない
・確保に手間がかかる=原価的に高くなる
経験あるけど、サイズ的にも量的にも、食用に確保すること自体がめんどくさそう
確保したとして、下処理どうすんですか・・・
シロアリの形態や生態を知ってるから尚更そう思うよね
日本で食用に流通しているシロアリは、10gで1,500円位が普通です
ラーメンでよく使うカタクチイワシの煮干と比べると単純計算で100倍です
もちろん飲食店ベースであればだいぶ単価は変わってくるでしょうが
この原価という理由で私自身も躊躇していたのは事実であります。
まあ、普通は食材の候補にすら出ませんね。
そんなことを考えているときに、ジャストなタイミングで朗報が
しかしまあ、これは運命かと
さあ後戻りはできません シロアリラーメン、作っていきましょう!
シロアリラーメンの構成を考える
なお材料のシロアリはタイ産の有翅虫(Nasutitermes属)ということだけ確認できました。
羽アリですが、製品化する過程で翅は丁寧に取り除かれていますね。
シロアリなので水洗いの過程で勝手に取れてしまった可能性も大ですが(シロアリですし)
なお、Nasutitermes属には日本だと「タカサゴシロアリ」が属します。
種類の特定まではできませんでしたが(悲)
とりあえずは、消化器官に未消化物が多そうな職蟻(働きアリ)でなくて良かったですね。
有翅虫はシロアリの生殖虫=最上級のエリート階級の為、自ら餌を摂らず職蟻から特殊な餌を与えられて過保護に育つ関係で、消化の良いものしか摂取しないので消化器官内の未消化物は限りなく少ないと想定されます。
昆虫は消化器内の未消化物の量で味がだいぶ変わってきてしまうので、雑味のリスクが限りなく排除されるている前提というのはかなりプラス要素です。
※特に精神衛生上
そしてラーメンを作る
(誰も参考にしないと思いますが)材料の詳細はこちらです。
①香味油
ラーメンの風味の方向性を決めるのが香味油です。香味油といえば、中華料理でよく使うラー油などが代表的です。
こちらは、シロアリの香りを効率よく引き出すために粉末状して油にいれ、加熱してシロアリの香味成分を油に移していきます。
ミキサーに入れて粗めの粉末状にし、
油を入れて電子圧力鍋で湯煎します
見た目はただの異物混入であります
②カエシ(醤油タレ)
カエシはいわゆるラーメンのタレです
ブレンドした醤油にシロアリをそのまま入れて加熱しシロアリの成分を抽出します。
この粒感が素敵ですね。遠目から見たら醤油麹に見えなくもないか・・・
~ ~ ~ 調理中、香ばしいシロアリと醤油の香りがキッチンに漂います ~ ~ ~
とりあえず、シロアリエキスの溶け込んだカエシを味見してみましょう。
キチン質からくるクリスピーな風味を想像しましたが、脂質が多くオイリーでナッツ感のほうが強く感じる、そして甘い!
確かに旨味もありますが、甘みを強く感じますね、糖質は少ないはずなので脂からくる甘味ですかね?
予想通り雑味もなく、香りもポジティブな虫の香りでなかなか良いです。
③スープを作る(出汁をひく)
ラーメンスープは旨味が命です。
旨味成分であるイノシン酸(主に動物由来)・グルタミン酸(主に植物由来)・グアニル酸(主に干椎茸由来)の3つは、それぞれを組み合わせることで旨味の感じ方が何倍にもなる特性がありますので、旨味の構成要素は以下のとおりに設定してみます。
なお、和食でよく使われる昆布・干椎茸などの旨味の抽出を目的とした食材は、風味にも特徴がある為、他の出汁材との相性も大事です。
正直シロアリ単体でもしっかり味は感じられるので完結できると思いましたが、若干物足りなさというか、旨味不足が否めなかったこともあり旨味要素の昆布と干椎茸を入れて検証してみました。
結果そのほうが断然美味しかったので、今回はそのパターンで。
今回入れた干椎茸は何気にポイントで、シロアリと味の相性がバッチリでした!
Nasutitermesの属するシロアリ科には、タイワンシロアリというキノコを育てるシロアリもいるのでシイタケなどの菌類とは親和性が高いのかもしれないですね~
材料すべてを水出しした図
④麺を作る
スープとともにラーメンの主役ですね。
もちろん自家製麺で、シロアリの粉末を練り込み風味付けをしています。
こちらはひと晩寝かせておいた手打ちの麺帯です、昨晩丁寧に仕込んでおきましたよ(ニヤニヤ)
このつぶつぶ感がシロアリパウダーです!
↓↓
最終形態「シロアリ混入麺」の完成です
もう1回言いますよ。この表面のツブツブは全粒粉じゃないです、シロアリです!!
⑤具・トッピング
具材のメインは今回のカエシで味付けしたチャーシューとメンマ
炙ることによりシロアリの風味を立たせ、香ばしさを加えていきます。
最後にトッピングとシロアリを添えて完成です。
シロアリラーメンならぬターマイトヌードル(Termite Noodles)の完成です
今回作ったのは醤油と塩の2種類です
薬味は紫玉ねぎ、白ネギ、パクチー等を使いエスニック風に仕上げました。
さあ召し上がれ!
①ターマイトヌードル(醤油)
②ターマイトヌードル(塩)
とりあえず上のシロアリを除けば、見た目はだいぶ美味しそうです・・・!
シロアリラーメンの味はいかに・・・
(おそるおそる、啜る)
ウマいぞ!?
シロアリ由来の甘さがいい感じに作用していますね。
そしてエビのような違うような不思議な香ばしい風味を感じます。甲殻類と同じキチン質由来によるものでしょうかね。
普通にうまい!昆虫の味ってのはかなりわかるけどネガティブさはなく、醤油ラーメンはシロアリって言われなければわからない。
思ったより癖がなくクリーミーで、豚や鶏の出汁っぽく、確かに言われなければシロアリってわかりませんね!
ずっと飲んでいられる味・・・塩ラーメンは、醤油の香りが無い分めっちゃシロアリ風味を感じるけど、これはこれでありかな。
個人的には、脂質の多いシロアリ(有翅虫)だったので乳化してコッテリして、澄んだスープの醤油ラーメンというよりは、豚や鶏などの動物系スープに近い印象もあります。
コッテリはしてますが、ラードみたいに重くなく植物油のようにサラッといけてしまうのも面白いですね。
なるほど、これが虫の資質(脂質)か…
味の特徴でいうと、印象的なのが動物の味でも魚介の味でもない独特の味ってことなんですよね。
ナッツと虫っぽさが交互にやってきて、おそらく外骨格のキチンからきているのではないかという香ばしい香りがほんのり漂います。
シロアリ麺も上出来で、すするたびに、噛むたびにシロアリの香りが立ち昇ります。
食材としてはクセがなく扱いやすい!というのが一番の印象ですね。
脂質由来のクリーミーさがあるので、辛味と酸味も絶対合う味ですね。
実際塩ラーメンはお酢(醸造酢)やワインビネガーとの相性が抜群でした。
今回は量の関係で2杯しか作れませんでしたが、次回作ることがあればエビの代わりにシロアリを使ったトムヤムクンや、担々麺あたりを作ってみたいですね。
シロアリラーメンの検証結果(食材としての考察)
正直クセのない有翅虫を使ったってのもあると思いますが、味だけで見るなら食材としてはアリです。
クセがないのでコオロギよりも扱いやすいです。
ただ残念ながら、入手性の悪さが全てでしょう。
そういう意味ではどこでも簡単に養殖可能なコオロギには叶いませんね。
何にせよ、今後はあまりシロアリラーメンは作らないと思いますが(笑)シロアリの食品という方向性を色々考察できて楽しかったです。
なお、今回の付け合せはコオロギ炊き込みご飯でした。
以上 ごちそうさまでした!
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