シロアリ以外の床下の生き物を紹介!床下生き物展

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Researcher

研究者プロフィール
田口 正訓

研究員 2007年入社

埼玉営業所テクニカルチーム

大学では在来草本植物の研究に携わり、自然環境と生物の相互関係を学ぶ。 2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。 休日も生き物や植物の写真撮影に勤しむ。

interview

シロアリ防除の為に床下に潜ると、シロアリ以外の生き物に遭遇することがあります。お客様から、「ゴキブリはいませんでしたか?」「蟻はいませんでしたが?」「ネズミはいませんでしたか?」とご質問をいただくことも。

床下とは、どのような環境なのでしょうか?

床下=真っ暗で外界より気温が低く、湿度が高いといった感じです。

つまり、床下は最も身近な洞窟。ある意味、人の生活圏に最も近い秘境です。シロアリを始め、この特殊な環境に好んで生息する生き物たちが存在するのです。

そんな、知られざるユニークな隣人たちを紹介します。

床下と外界の世界を繋ぐ、基礎通気口。ここから、生き物が出入りする。

※本来なら、全て床下で撮影した写真で統一したいところですが、床下に一眼レフを持っていくのはなかなかシビアですので、野外で撮影した写真も使用しています。あしからずご了承ください。

無脊椎動物

無脊椎動物とは、文字の通り脊椎(骨)を持たず、外骨格に覆われた生き物のことを指します。昆虫、クモ、甲殻類などです。床下に生息するのは主に無脊椎動物です。代表的な種類を紹介します。

  • カマドウマ

床下といえば、カマドウマ。それくらいカマドウマがいます。

カマドウマとは、どんな生き物なのでしょうか?

竈にすむ馬という意味で、カマドウマという名前が付いています。

小学生のころ、図鑑を見てカマドウマという生き物を初めて知りました、今まで観察したことがありませんでした。それもそのはず、カマドウマは夜行性で昼間は洞窟や樹洞の中で隠れており、姿を見せることはありません。

社会人になり、仕事を通じて初めてカマドウマを見ました。その時は「おお、これがカマドウマか!」と感動したのを覚えています。

今では仕事でしょっちゅう目撃しているので、感動することもなくなりましたが……

床下で見る機会は、シロアリよりも断然に多いです。

床下で最も普通に見られる生き物といってよいでしょう。

便所コオロギという俗称がついているが、コオロギよりもキリギリスに近い種類です。

翅は退化していて、飛ぶ事は出来ませんが、跳躍力に優れます。仕事中、集団でこちらに向かってジャンプしてくる姿は、なかなかの恐怖です……

見た目は少々気持ち悪いですが、実害はありません。野生では落ち葉や樹液などを食べて生きています。

床下で撮影したマダラカマドウマの幼虫。床下で見られる個体は体長1.5~2㎝ほどの幼虫が多い。カマドウマは不完全変態の為、成虫も幼虫も同じ形をしている。
夜の雑木林で撮影した、斑点模様のないカマドウマ。このタイプは床下で見ることは少ない。
マダラカマドウマの成虫。樹液をもとめてクヌギにやってきました。
本来、カマドウマは写真のような樹洞や洞窟の中に生息し、夜になると活動のために外に出ます。
  • クモ

カマドウマと並んで、見かけることが多いのがクモ。床下に巣を張り、床下に侵入した他の昆虫や節足動物を捕食します。

床下でよく見られる代表的な2種を紹介します。

  • イエユウレイグモ

床下を匍匐前進すると、顔によく引っかかり、不快な思いをするのが本種の巣です。不規則に糸が張られていて、暗い環境ですので、糸が見えないのです。

危険を感じると、身体を上下左右に激しく揺らして威嚇することがあります。果たして外敵に効果があるのか……、謎です。

細長く、幽霊を彷彿とさせることからこの名がついたようです。
不規則に糸を張り、獲物を待ち伏せします。
  • アシダカグモ

その大きさと見た目で最初見たときは驚いてしまう。しかし、その姿とは裏腹に性格は大人しく、しかもゴキブリを捕食する益虫。徘徊性の種類で、巣を張ることはありません。床下・家屋内の生態系においては、高次捕食者に該当します。

床下を休憩所として利用し、夜になると通気口から抜けて周囲を徘徊するのでしょう。

被食者となるゴキブリは、床下で見かけることは確かにありますが、思っているより少ないです。

なお、近似種にコアシダカグモがいます。こちらは、東北地方では家屋に侵入しますが、関東地方では森林に生息する種類です。こちらも載せておきます。

床下の番人。アシダカグモ。タランチュラのようないかつい見た目ですが、大人しく、ゴキブリハンターです。
アシダカグモの近似種、コアシダカグモ。アシダカグモによく似ていますが、頭部の模様と生息地が異なります。
  • その他

カマドウマ・クモ以外の生き物も紹介していきます。

  • トビズムカデ

肉食性で夜行性。昼間は倒木の下など暗いところで休息していますが、床下を住処にすることがあります。毒がある為、危険視されることがありますが、性格は意外と臆病で素早く逃げてしまい、撮影が難しいです。

警戒心が強く、動きが素早いため、撮影が難しい。土台の隙間に隠れようとする。
基礎上を歩行する。垂直面も容易に登っていきます。
施工中、基礎通気口から出てきたところを捕獲。強靭な毒牙が確認できる。
  • ゲジ

ムカデと同様、床下に生息している事があります。ふた回り大きいオオゲジがいる事もあります。周囲が山林に囲まれた家で見ることが多いです。ゲジもムカデと同様、夜行性。

生き物好きの私でも、脚の本数を見るとむずがゆくなります……。

・その他

レアなケースでは海岸から1㎞以内の立地の住宅地で、クロベンケイカニがいたことがありました。1例のみです。

脊椎動物

ここまで、無脊椎動物について紹介してきました。魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類が該当する脊椎動物。種類は限られますが、脊椎動物も生息していますので、そちらも紹介します。

  • 二ホンヤモリ

二ホンヤモリは夜行性で、昼間は家屋の隙間や樹洞等で寝ています。夜になると、餌となる昆虫を探すため、野外に出て活動します。

床下が住処になる事もあり、通気口の隙間から出入りします。

基礎や土台等に卵が産み付けられている事もあります。

名前に二ホンとついていますが、古来、中国から渡来した外来種だということがわかっています。
基礎に付着していた、ヤモリの卵。ヤモリは床下を産卵場所として利用している。
  • アズマヒキガエル

俗に言うガマガエル。カエル=水辺というイメージがあるかと思いますが、本種は産卵以外は水辺に入らず、内陸に生息し、都市部でも見られます。夜行性で、昼間は土の中、石の下などで休み、夜になると徘徊します。幼い個体が基礎通気口から入り、床下のカマドウマを捕食して成長し、大きくなりすぎて外界に出られなくなった事例がありました。まさに、井の中の蛙のようなシチュエーションでした。

ヒキガエルの若い個体。大きさは3㎝ほど。小さい時に基礎通気口を行き来することがある。
  • アオダイショウ

アオダイショウは日本で最も身近なヘビです。人の生活圏に近いところで生息しています。

アオダイショウは冬眠するために、あるいは餌となるネズミを探して床下や小屋裏に侵入することがあります。基礎通気口や建物の隙間から出入りします。

その他、幻のヘビと呼ばれるシロマダラを1回だけ、床下で目撃したことがあります。

人家近くに多いアオダイショウ。都市部でも適応する能力がある。
  • その他

写真を撮れていないので、文章のみの紹介となりますが、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミの家ネズミ3種も床下に侵入することがあります。アブラコウモリも冬眠していたこともありました。すべて夜行性の生き物です。やはり、休憩所として利用しているようです。

まとめ

いかがでしたか。床下は生き物にとって

  • 夜行性の生き物の休息場所として利用されている。
  • アオダイショウ等の昼行性の生き物も、採餌や冬眠の目的で利用する。

床下に生息する生き物の多くは夜行性。自然界に存在する、樹洞や洞窟の代わりの場所として大いに利用されていることがわかりました。

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