新築でも被害はあるのか?日本の住宅事情とシロアリ被害のいま【シロアリの専門家×建物の専門家コラボインタビュー】
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Researcher
- 七海 里枝
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研究員 2008年入社
管理課
大学では木材害虫および森林昆虫を専攻し、菌食性昆虫の生態研究を行う。 2008年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 シロアリをテーマとした漫画を執筆し、(公社)日本しろあり対策協会の展示会に出展協力など、異色の経歴を持つ。
interview建物の不具合等を調査するホームインスペクション(建物診断)。調査項目の中にはもちろん「シロアリ被害の有無」もあります。シロアリの専門家として多くの被害現場に携わり、生態や行動に関する実験・調査を行っている白蟻専科の田中さんと、これまで様々な住宅の診断を行ってきた建物インスペクターであるe-Loupeの鳥居さん。お二人のコラボインタビューを実施致しました。
インスペクションとは

(七海) まず鳥居さんにインスペクターのお仕事のことをお聞きしたいと思います。
あらためて「インスペクション」とはどういったサービスなのでしょうか。
鳥居 もともとはアメリカで中古住宅の売買時に、買い手の不安を解消するために始まったのがホームインスペクション。そのための専門知識を持っていると認められた人がインスペクターです。
(七海) なるほど、売りに出されている中古住宅の劣化や不具合を調査するサービス。
鳥居 ただ、ここ最近はSNSの普及で個人の発信力が強くなってきたこともあり、新築住宅でも不具合があるということが知られるようになってきました。現在の当社のインスペクションも大体6割ぐらいは新築です。世の中の傾向としてもインスペクションの需要は新築が増加傾向にありますね。
また、都心では盛んですがそこから離れるにつれ「インスペクションってなにそれ?」みたいな、まだまだ認識すらされていないようなサービスでもあります。
(七海) 現在のインスペクションの需要の多くは新築住宅が多いんですね。意外です。
鳥居 中古住宅の場合はどちらかというと「そのままでいいよね」という人が増えている印象です。
最近は自分でリノベーションするのも流行っていますし、買取再販という形で不動産会社が自分達で直して売ることをしていたりもします。そうなると「インスペクションしてもどうせ全部リフォームするから関係ない」となる。
インスペクションで調べる建物の劣化とは?
(七海) インスペクションの際に見る建物の劣化や不具合とは、どのようなものがあるのでしょうか。
鳥居 物件の種類にもよるんですが、メインは雨漏れなど構造に関係する劣化になります。
頻度として多いのは外回りの劣化ですね。外壁のヒビもそうだしコーキングの割れ・欠け・破断とか…細かく言っていくと何十種類もあります。
構造躯体(梁や柱など、建物を支える主要構造)については、古ければ古いほど建築基準法を守ろうという意識が低い建物が多い傾向にあって。梁に穴が空いていたり基礎を削っていたり、構造躯体の壊しちゃいけないところを壊してる、という建物もときどきあります。

田中 外周周りの劣化については、住宅メーカーや工務店の担当者さんの依頼で一緒に点検してるとき、担当者さんがお客様に対してよくそういう話をしているのを見ますね。自分はシロアリの専門家として伺ってるのでそういった劣化の話はしないんだけど、メーカーさんは建物のチェックをしてるから。
鳥居 僕達も調査で行って住宅メーカーの担当者がいることはあるんですが、僕達は検査員として伺っていて、メーカーの人は検査員が変なことを言わないかなって言うのを見に来てる感じがします。
田中 そこがインスペクションとシロアリ点検の立場が違うところだよね。
シロアリ点検はあくまでシロアリの専門家として被害や生息状況を調査して、仮にそれ以外の不具合を見つけても事細かに指摘することはしないんだけど、インスペクションは建物の専門家としてそれらをはっきり指摘してあげないといけない。
鳥居 購入者の方が損をしないように、安心して気持ちよく家を買えるようにするのがインスペクションですから。工務店と懇意ではない第三者の立場でお伺いして、悪いものは悪い・良いものは良いと伝える必要があります。言いづらいことを言うのがインスペクションの仕事だと思うのでそこは差があると思いますね。
実際の報告書を見せていただきました。
※お客様の許可を得て掲載しています。

田中 この建物はなにか指摘事項があったんですか?
鳥居 屋根が割れてて、割れたかけらが雨樋の中に放置されてたり、窓がちょっと閉まらなかったりとか色々ありましたよ。あとは子どもが遊ぶ人工芝の中に尖った金属片が転がっていたり、雨樋が繋がってなかったり…。
(七海) そんなところまで見ていただけるんですね。
鳥居 うちのインスペクションは業界の中でもチェックが細かいらしいです。
シロアリ目線と建築目線の違い
(七海) ここまでインスペクションのお仕事について色々教えていただきましたが、次はインスペクションにおけるシロアリ被害の位置づけについてお聞きできればと思います。シロアリ被害とは、インスペクションで見る建物の劣化としてはどのような位置づけなのでしょうか?
鳥居 僕達は家を買うという立場の方とやり取りすることが多いので、シロアリが生息していることを報告したときのお客様の反応としては「ええ!?」っていう感じにはなりますよね。
調査する立場としては「またか」という気持ちですが、お客様としては結構重大にとられられる事が多い。ただ、被害箇所を交換するなどの適切な対処をすれば直せる劣化ではあるので、僕としては悲観的にはなっていません。

田中 そこもシロアリとインスペクションでは違うかもしれないね。
建築目線とシロアリ目線の違いって「結果を見るのか原因を見ていくのか」っていうのがあるのかなと自分は思っていて。建築目線だと「どれだけ構造性能が失われているのか」といった結果の方を重要視していて、シロアリ目線ではシロアリの種類とか、活動そのものが重要視されてるかなって気はしてます。
種類が違えば被害状態が違っていたり、コロニー規模も違う。駆除のやり方も変わってくる。「なぜシロアリ被害ができたのか」の原因を探っていくのがシロアリ目線かなと。
鳥居 たしかにそうですね。もしインスペクションでシロアリ被害が見つかった場合、どのような修繕が必要だとか、どんな対策があるだろうかとか「その後の事」を考えます。そこは違いますね。
新築でもシロアリ被害は見つかるのか?
(七海) 現在は新築住宅のインスペクションがメインとのことですが、その中でシロアリ被害が見つかる頻度はどのくらいでしょうか?
鳥居 新築住宅ではほぼないですね。中古住宅でも、僕達がお伺いすることの多い築年数の建物ではなかなか見つかりません。築年数30~40年の建物ですとだいたい3割ぐらいの頻度になります。
そもそもインスペクションを依頼している時点で、家のことに対して少し興味があるお客様なんだと思います。建物の劣化や修繕といったことを気にされてる方は、シロアリの対策もこまめにやってる方が多いのだと思いますね。なので僕達がやってる中古住宅については被害が見つかりづらい。
田中 自分も今まで相当な件数の建物を見てきたけど、新築物件で被害があるのは数件程度だったな。
(七海) 新築で被害があるってどんなシチュエーションなのでしょう?
田中 一番はカンザイシロアリかな。どこからでも入れるから、床下に防蟻工事やってるかどうかは関係なく被害が出る。ヤマトシロアリが新築住宅で被害を出すとしたら、建てるときの防蟻処理に問題があった可能性はあるね。
以前、新築住宅でシロアリ被害がでた物件で原因を探ってほしいという依頼があって。よくよく話を聞いてみると、家を建てる段階でまだいろいろな作業が残ってるのに先に防蟻処理をやってしまったんだよね。その後に新しい土が運ばれてきたり処理した部分を踏み荒らすことになってしまって、それで防蟻の薬剤層が崩れちゃったのかな、という物件があったな。
日本におけるシロアリ被害の今後
(七海) 近年は空き家の増加・新築着工数の減少が問題視されていますが、そういった住宅事情を踏まえたうえで、今後日本の住宅においてシロアリ被害件数はどうなっていくと予想されますか?
鳥居 新しい住宅は減っていっているけど古い家は増えちゃってるから、シロアリの件数自体は増えていくんじゃないでしょうか。
空き家が増えているということは、人の手が入らない家がどんどん増えているということですから。雨漏りも放置されてシロアリも食べちゃうし、そうした空き家からシロアリが群飛して被害が拡大していくことは考えられます。
田中 空き家が増加すればそれをメンテナンスする人もいないということ。新築の着工数が減ってるってことも、シロアリ対策をやってる建物自体が少なくなるということにつながる。シロアリ対策は新築の時しかしていない、建てて以降は手を付けないという人も結構いるからね。
鳥居 ざらにいますね。
田中 そうなると防蟻処理の効果が切れていて、築年数が高い建物が増えていく。シロアリにとっては食べやすい建物が増えていくことになる。結局は建物の維持メンテナンスが重要になると思う。
鳥居 インスペクションをやっていくなかで、現状の不具合の有無もそうなんですが、その建物がシロアリ対策やっているかどうかも見ています。
対策がされていないと、将来水回りの設備が壊れて水が滴るような状態になっただけでもシロアリの被害に遭う可能性が高くなります。なのでそういった建物のお客様には「シロアリ対策をしておいたほうが良いですよ」とメンテナンスの重要性を説いています。

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