昆虫館探訪vol.1 大阪府箕面公園昆虫館
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Researcher
- 木村 健人
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研究員 2009年入社
経営企画部webマーケティング課専任課長
シロアリ・木材腐朽菌に対する防蟻・防腐薬剤性能評価、木材保存について在学中に携わる。 2009年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。趣味はシロアリ飼育。
interview「大阪出張の帰り、せっかく大阪に来たなら白蟻専科らしいことができないか」
そんなことを考えていたのだが、大阪でシロアリを探しても目新しくないし、そもそも土地勘も無い…。
であれば、なにか昆虫に関するものを見に行ってみようか、と考えて調べると、実は関西には昆虫館がたくさんあるらしい。
大阪には箕面公園昆虫館、兵庫には伊丹市昆虫館、奈良には橿原市昆虫館があるのだが、今回は歴史があり、自然豊かな環境にある箕面公園昆虫館に行くことにした。
そんな私のわがままに田口さんが付き合ってくれたので、2人で箕面公園昆虫館をレポートしていく。
箕面公園昆虫館ってどんなところ?
今回、伺った箕面公園昆虫館は、大阪府箕面市に位置する歴史のある昆虫館だ。豊かな自然林が広がる箕面公園内に位置し、多くの観光客が訪れる人気のスポットでもある。
この日は紅葉も始まっていて、平日にも関わらず観光客で賑わっていました!
紅葉の名所としても知られており、駅から箕面大滝へと続く沢沿いの道にはイロハモミジが並ぶ。
道に沿って営業しているお店では名物「もみじの天ぷら」が売られていた。天ぷらを買って食べ歩きしながらの紅葉散歩も良さそう。
箕面といえば「もみじの天ぷら」ってのは関東でも有名ですからね…!
箕面公園昆虫館はこのような環境で、1953年(昭和28年)の開園から今も自然豊かな中で昆虫たちの多様な生態を観察することができる。
箕面公園昆虫館を探索
ということで、今回は大阪の箕面公園昆虫館をレポートしていきます!
こちらは大阪府の公営施設のため、大人280円、中学生以下無料と格安の入場料となっている。本当にこれだけで良いの…?と思ってしまうが、家族連れの方にとってはありがたい施設とも言えそう。
また写真撮影はフラッシュや三脚の使用は禁止のため、私たちみたいにガチで観察したい人は要注意。
まず入ると出迎えてくれたのがナナフシの仲間たち。ナナフシモドキとタイワントビナナフシの生体展示だった。
ナナフシって、「7つの節(沢山の節)を持つ木の枝」という意味で、モドキは「のようなもの」の意味があるの知ってた?
え、じゃあ「たくさん節がある木の枝のような虫」ってことですか?
そう、だからナナフシモドキは「ナナフシという虫のニセモノ」じゃなくて、「木の枝のニセモノ」って意味になるの。実はナナフシって虫はいなくて、このナナフシモドキが普通のナナフシなんですよね。
そうなんですか…!でも本物なのにモドキが付くとちょっとかわいそう…
さっそく田口さんの昆虫解説に関心させられながらも、蟲神器で勉強したナナフシモドキがいきなり出てきて童心に戻る自分…。ちなみに、この日の箕面公園昆虫館には他にも多くのナナフシが生体展示や標本展示されていた。
トゲナナフシ。日本では本州から九州、奄美群島に分布する。トゲトゲした体表のナナフシで、そのほとんどがメスらしい。
ツダナナフシ。南西諸島に生息するナナフシ。刺激するとミントのような香りがする液体を出すそうだ。
ユウレイヒレアシナナフシとトゲヒレアシナナフシ。オーストラリアやニューギニア島に生息するトゲが発達したナナフシだ。
サカダチコノハナナフシ。世界最重量級の昆虫で、威嚇するときに背中を反らせるように逆立ちするために名付けられたとか。
35年ぶりの新種ゴキブリの展示
35年ぶりに発見された新種のゴキブリを見る田口さん。
このアカボシルリゴキブリは2020年に記載されたルリゴキブリ属の仲間で、今までは日本産ルリゴキブリ1種だったものが、このアカボシルリゴキブリとウスオビルリゴキブリの2種が加わったのだそう。
のちに宮古島でベニエリルリゴキブリが増えて現在は4種のルリゴキブリが日本にはいるそうだが、それらの記載を記念して展示されていた。
発表当時は生体展示もあったみたい。以下は当時のXポスト。
新種アカボシルリゴキブリの生体と標本展示中です!左上のスペースが寂しいので生体写真を置きます。あと飼育ケースの下に鏡を設置して観察しやすくします(明日買いに行きます)。成虫寿命は比較的短いのでお早めにどうぞ!【館長】 pic.twitter.com/i8Bh2DggA1
— 箕面公園昆虫館 (@mino_insect) November 27, 2020
令和の今でもこんな大型昆虫の新種記載があるのって夢がありますね、しかも調べ尽くされていそうな日本で…
ちなみに、このゴキブリは家に出てくるようなゴキブリと違って森林の朽木などに住む種類なので、気持ち悪がらないでほしいですね…!
また、ゴキブリの仲間ではマダガスカルゴキブリ(バンワエレベキマダガスカルゴキブリ)が展示されていた。実は白蟻専科社内でもこの仲間を何種類か飼育している。
って、これちょうど産卵中の雌じゃないですか…!
卵鞘を産み落としているところだね。
マダガスカルゴキブリの仲間は卵胎生という特徴があり、卵鞘を産み落としたあと再び体内に取り込み幼虫に孵化するまで体内で育てる。これはちょうど卵をうんだところで、このあと再び体内に取り込み、保育嚢という器官で孵化するまでしまい込むのだ。
これ結構貴重な瞬間だけど、一般の方が見たら引きそうですね…
ゴキブリたちの横には、アメンボの展示も。こちらは子どもたちが下から覗けるように底が透明なケースで飼育されていた。
このオオアメンボも土地開発や河川改修などで減り続けているんです。自分たちが子供の頃はどこにでもいたけど、最近では珍しくなってしまいましたよね。
アメンボが抱えているゴキブリって餌ですか?刺して吸っているように見えますが
アメンボはカメムシの仲間だから針状の口器で獲物の体液を吸っているところだね。
へぇ〜、アメンボってカメムシの仲間で肉食なのか…サシガメみたい。
※サシガメ:カメムシの仲間で肉食性の昆虫
昆虫の花形、甲虫たちもいました。
昆虫館といえばやっぱりカブトムシやクワガタムシ。ここまでマニアックな虫たちが展示されていたが、こちらでもしっかりと甲虫の生体展示がたくさんあった。
これはギラファノコギリクワガタ。東南アジアに生息する世界最長のクワガタムシとして有名だね。
上から、ヘラクレスオオカブト、クロカタゾウムシ、クビワオオツノカナブン。有名な巨大カブトムシからなかなか見ない甲虫も居て面白い。
クロカタゾウムシは世界で最も硬い昆虫で、実は日本では八重山諸島に生息しているんだよね。
蟲神器にも出てきますけど、小さいのに体力がすごく高いんですよね。なるほど、やっぱ蟲神器勉強になるなぁ。
あと、途中にキッズルームや映像シアターもあって小さなお子様連れの方でも安心。子どもたちも飽きない仕掛けが至る所に散りばめられていた。
企画展「虫のあし(脚)〜機能としくみ〜」
展示の後半には、ちょうど企画展として「虫のあし(脚)〜機能としくみ〜」展が開催されていたので、カマキリやケラ、水生昆虫などの特徴的な昆虫が沢山展示されていた。最初に紹介したナナフシもおそらくその一部で、虫たちの脚にフォーカスした展示がなかなか見応えある。
※上記企画展は2024年12月16日(月)まで
やっぱり脚といえばテナガコガネの仲間ですね!日本にもヤンバルテナガコガネって種類がいて、天然記念物として保護されているんです…!(蟲神器で勉強しました)
テナガカミキリもテナガコガネと同様に前脚が発達していて、他のオスとの争いやメスとの交尾の際に使われるそうだね。
蟲神器でもこの長い脚を使った攻撃が結構いやらしくて使えるんですよね…
他にも、後脚が発達したコガネムシの仲間や、オオツノハナムグリの仲間も展示されていた。企画展の見どころに書いてあるように、生息環境や生態に合わせて機能や形を持っていることが分かる。
このミズカマキリは発達した鎌状の前脚で獲物を捕らえるみたいだね。カマキリに似ているけど、実はこれもタガメやタイコウチと一緒でカメムシの仲間なんですよ…!
え、じゃあさっきのアメンボみたいに針を刺して体液を吸うのか…
※タガメやタイコウチは水生昆虫でミズカマキリ同様にカメムシの仲間。
放蝶園は昆虫館のメイン
昆虫館といえば、蝶の温室「放蝶園」。箕面公園昆虫館でも一年中蝶が羽ばたく姿を見ることができる。この日は15種類の蝶が掲載されていたが、その全てが見られるとは限らないようだ。
関東だと、足立区生物園やぐんま昆虫の森、多摩動物園の温室がすごく有名でよく撮影に行ってるけど、ここだとタイワンキマダラが珍しいかな。
これがタイワンキマダラ。人工物が背景なのはあれだが、なかなかうまく撮れた気がする。これ、実は田口さんに写真の撮り方をレクチャーしてもらったのがかなり大きい。かなり詳しく解説してもらったので、ここでしっかりまとめておく。
田口さん流「蝶を撮るコツ」
①翅を閉じて止まったら、まず真横を撮る
蝶は翅の表と裏で模様が異なる種類が多い。例えばコノハチョウ。翅を閉じると枯れ葉そっくりだが、翅を開くと青色とオレンジ色でいかにも南国な色合い。なので、止まって翅を閉じた時は真横の写真を撮る。
(写真)田口さん撮影のコノハチョウ。横から撮影。
日光浴や気温が低い日は開翅してくれる事もあるので、その時は真上から開翅の写真を撮り、同定できるようにしておく。
(写真)田口さん撮影のコノハチョウ。開翅の状態。
②近づく時は原則忍び足で
蝶は種類にもよるが、警戒心が強い。動くものに反応し逃げてしまうので、止まったら慎重に近づく。但し、訪花し吸蜜に夢中になっている時は警戒心がなくなっている事もあるので、大胆に近づいて寄れる事もある。
③作品意図に合わせてレンズを交換する
「蝶だけを綺麗に撮りたい!」って時はやはり中望遠の単焦点マクロレンズが1番良い。シジミチョウやセセリチョウのように小さい被写体はマクロ一択!単焦点レンズは明るいので、絞りを開放気味にすればシャッター速度も稼げるし背景も綺麗にボケる。
- 真横で撮る時:絞り開放(f2.8レンズで2.8)だと複眼にだけピントが合って翅の先端がボケるので、一段絞る(f2.8レンズならf4)と蝶はシャープで背景がボケて綺麗に写る。
- 開翅の場合:真横で翅を閉じてる時よりも被写体の奥行きが増すので、少し絞る(f2.8レンズなら5.6から7.1くらい)
- 生息環境を伝えたい場合:広角レンズを用いて、最短撮影距離まで近づいて絞って撮る(f4レンズならf6.3から9くらいか。絞り過ぎるとシャッター速度が落ちてブレやすい。暗いならf5.6)
標準ズームレンズはオールマイティに撮れます。上記の2パターンをカバー出来るけど、マクロレンズと比較すると背景のボケの弱さと、被写体のシャープさで劣る点は欠点ですね(f2.8の大口径高級レンズならさほど気にならないかも…)
ちなみに、警戒心が強くて寄れない種類、あるいは立入禁止の場所にいる場合は300ミリ以上の望遠ズームレンズがあると便利。望遠の場合はブレやすいので、絞りは開放気味が原則。
④露出補正、色温度は図解写真ならあまりいじらない
作品コンセプトや意図があるなら思い切りハイキーやローキーにしたり、色温度を変更するのもあり(この場合は個人の美的感覚に委ねるので、他人がとやかく批判するものではない)
こんな感じで撮れば結構良い写真が撮れるんじゃないかな
じゃあ自分のカメラはf2.8通しのズーム28mm-70mmなので、望遠側でF値を絞って調整しながら撮影するって感じですね!
リュウキュウアサギマダラ(開翅)
リュウキュウアサギマダラ(真横)
スジグロカバマダラ
シロオビアゲハ(メス)
ズームレンズでも意外と撮れますね!でもやっぱり100mmマクロがあると良いってのが分かります。これでも結構トリミングしてますので。
でも、こうやって気軽に南国の蝶を観察できるのが放蝶園の魅力ですね!
シロアリの要素はあった?
ちなみに、シロアリの要素もゼロではなく、節足動物全31目の系統樹の解説中に、ゴキブリ目の一員としてしっかり解説されていた。
実はシロアリはちょっと前までシロアリ目として独立した種類だったのですが、最近ゴキブリ目の一員として数えられるようになったんですよね。
シロアリはゴキブリの仲間と言われるけど、今では正真正銘のゴキブリの仲間、ということだね。
この全31目の系統樹の展示は、全然知らない種類も多く勉強になる。他の昆虫館の展示はそこまで見たことは無いが、ここまでまとまっているのはなかなか無い気がした。
トンボの標本も非常に多い
箕面昆虫館は初心者から上級者まで楽しめる場所だった
蝶のフォトスポットでの田口さん(蝶は現れず…)
今回は大阪の箕面公園昆虫館へ行って白蟻専科のネタ探しをしてみたが、思いのほかマニアックに楽しめる昆虫館だったと思う。あまり公営の昆虫館が無い関東人にとって、こんな場所がたくさんある関西は結構うらやましい。
シロアリについてはさすがに取り扱いが小さかったですが、企画展とかでクローズアップされたらまた見に行きたいですね!
あと、グッズ売り場には結構おしゃれなグッズが売られていたので、ムシが苦手でなければおすすめです!自分は飼育してるゴキブリステッカーと昆虫観察時に怪しまれない用の腕章を買って帰りました…!
箕面公園昆虫館の情報
所在地:大阪府箕面市箕面公園1-18
阪急箕面駅から歩いて15分〜20分(約1km)
ホームページ:https://www.mino-konchu.jp/
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