釣れる?釣れない?シロアリ毛鉤の可能性を探る!
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Researcher

- 田中 勇史
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研究室長 2007年入社
シロアリ業務技術開発課専任課長
大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。 大学の海外調査にも協力。
interview皆さんは、フライというものをご存知でしょうか。
言っときますけど、食べ物のフライじゃないですよ。
フライっていうのは、様々な昆虫を模した魚を釣るための疑似餌のことで、毛鉤なんてよく言われたりします。
「フライの中で昆虫をイミテートしたものは数多くあるんだけど、シロアリを模したフライって聞かないよね」
ふとそんなことを思ってしまったわけです。
ないのなら. . .ここはもう釣り好きシロアリ業者としては作るしかない…!
ただ作るだけではもったいないので、ぜひともこのシロアリフライで魚を釣ってみようという企画に挑戦します。
素材を何にする?

フライを作るのに使われる素材には結構いろんなものがあって、大きく分けるとナチュラル素材とシンセティック素材に分けられます。
最も一般的なのはナチュナル素材かなって思うんですが、鳥の羽とか様々な動物の毛を使ったものが多く見られますね。

一方、シンセティック素材と言われるいわゆる人工で作られたものを使ったフライも多く、化学繊維やフォーム、ビニールチューブなどが良く見られる素材です。
私の勝手なイメージとしては、ナチュラル素材のほうがよりリアル感が出る気がしますね。
シンセティックは何となくボヤーっとそれっぽい感じ?
せっかくならリアルなの作りたいけど私結構不器用だからねぇ、とんでもないのができたらどうしよう 笑
怖いもの見たさはあるんですけど、やはり釣れないとこれまた困っちゃうってことで今回はシンセティック素材でのタイイング※1に挑戦です。
※1:タイイングとはフライを自分で巻いて作ること。
ちなみに今回、挑戦するのはいわゆる地面の下にいるシロアリではなくて羽アリに挑戦しようと思ってます。
まぁ、川で流れてくるシロアリと言ったらたいていは羽アリですからね。
素材の調達
ここねぇ、結構迷ったんですよ。
素材調達、自然に落ちているもの拾ってくるとか家にあるものを利用してなんていうのも考えたんですが、時間の都合上ここは申し訳ない. . .購入させて頂きました。

フォーム素材の棒だったり、化学繊維のワタ的な?
シンセティック素材は、こんなものでほんとに作れるの?ってものばかりですね。
ちょっと購入品だけだとつまらないかなと思って、タダで入手できる素晴らしい素材を入手しましたよ。

どこのご家庭にも必ず1枚はあるであろうただのビニール袋です。
これがシロアリのどこのパーツになるんでしょうね。
後ほど紹介します。
シロアリタイイング初挑戦
始めて気づく. . .これ難いやつや 笑
まずフォームを切ることから始めるんですが、大雑把な私には正確に半分に切るとか無理!

なんかもう既に失敗してない?
気にせず先に進む. . .じゃあね、まず初めにシロアリのボディーを作っていきましょう。
そのままフォーム材を乗せてもいいんですが、針がむき出しだと流石に魚からは違和感しかないので、針を隠すための毛を巻いて行きます。
購入した素材、思ってたよりも固く、これ糸に上手く巻き付けられないぞってなった。



なんか違う気もするけど、とりあえず針が隠れれば良しとしよう。

次にフォーム材を使ってシロアリの腹部を完成させますよ。
適当. . .ほんとに適当に切れたフォーム材を針に乗せて固定した後、折り返して腹部の形を決めます。


あれっ!て思いました?
私は思いましたよ。
太っ!って 笑
まぁ、最初だし許してくれるよね。
どんどん行きましょう、今度は羽を作ります。

予め本物の羽アリから羽の型を取っておき、それに沿って切り出していきます。
ここで、登場するのが例のビニール袋!
柔らかさ、色、浮力、撥水性どれをとっても最高の素材なんです。
後ほど、水に浮かべた姿をお見せしますが私的には完璧でした。
この切り出し作業、簡単に言ってますがとっても難易度が高い細かな作業で、これもまた思ったようにはなかなか切り出せないのです。

なんかこれも失敗してるような気もしないでもない. . .
そんなこと言ってても何も始まらないので先に進みます。
では、このフライ制作の中で一番難しい作業に取り掛かりましょう。
羽の取り付けです。


これ、まっすぐ取り付けるのが難しく大苦戦!
そりゃあ、こんな真剣な顔にもなりますよね。

汗だくで頑張った成果. . .だんだんと形になってきましたね。
次の工程として、シロアリの羽アリらしさを表現していきましょう。
じゃあ、羽アリらしさってなんだと思いますか?
そう羽アリには首筋に黄色いラインが入るのが最大の特徴なので、再現しましょう。
これが入らないとなんの虫?ってなっちゃいますからね。


なんかそれらしくなったのかな。
どう見てもヤマトシロアリの羽アリ?
頭の中では、シロアリ?アリでしょ!ってしきりに訂正が入ってました 笑
敗因. . .
初めてのシロアリタイイング、敗因と考えられるのは絶対腹部の太さでしょ。
ここを調節すれば、必ずやシロアリの羽アリに見えるはず。

幾度となく作り直し、完成形としたのがこちら。
ま、まぁいいんじゃない。


しかも見てください!この浮き方を。
魚目線で見ると、まさにシロアリの羽アリですよ!
私が魚だったら危うく食いついてるところでした。
ただ、自己満足で終わっては意味がありませんね。
ここは魚に聞いてみないと. . .
実釣しますよ!
と、いうことでやってきました! 川です 笑
いや、正確には管理釣り場。
今回は、神奈川県にあるリヴァスポット早戸へお邪魔しました。
ここは、魚影も濃くパワフルで元気な魚達が多数いるので、このフライを試すには申し分ない場所です。

実際、川に浮かべてみると益々シロアリの羽アリが水に落ちて流れているようですね。
これは、絶対釣れる! 確信しました。




試しにとちょっとやってみたら答えは早かった。
そう時間はかからないうちに早々とヒットしました。
食べる瞬間を撮影できなかったのは残念ですが、綺麗に真下から浮上してバクっと食べてくれましたね。
迫力満点のバイトシーン※2に感動しました。
※2:魚が餌や疑似餌に食いつく様子
これは面白いと、次の魚を狙っているとすぐにまた釣れました。



ただ、またしても食べる瞬間は撮れず. . .
食べる瞬間は一瞬なので、なかなか正確にカメラに収めるのはもう神業の域。
撮影できないのも無理はありません。
なんとか最後にその瞬間を捉えたいと粘っていた時でした. . .

合わせた瞬間、あっちょっと遅すぎたって思ったんです。
時既に遅し、フライは丸呑みされて糸が切れてしまいました!
ここでタイムアップ。
もう少し、いろいろと試したかったんですが残念。
これはもう完成と言ってもいい!
少ない時間での実釣でしたが、しっかりとシロアリフライに魚は答えてくれましたね。
改善点は多く見つかったテストにはなりましたが、勢い良くフライに飛びつく姿や最後丸呑みまでして食べたいと思ってくれたということは、もう魚から見ても本物に見えていたということですよ。
我ながら素晴らしいフライを作ってしまったかな 笑
これからの課題
- 浮力不足:浮力体を多く使用したフライなので浮きやすいと思いきや、最初だけでフロータントをしっかり付けても後半はすぐに沈んでしまうようになった
- 強度不足:短時間でのテストでしたが、何度か魚に噛まれると解けてくる
- 形状工夫:ビニール製の羽は非常に良かったが、抵抗が大きく遠くに飛ばしづらいことが判明
おまけ
実際に作ったシロアリフライで魚を釣ってみようという企画は大成功!だったわけですが、こんなに美味しそうな魚を前にして食べないというのももったいないですよね。



と、いうことで私の得意料理にして、最もマス料理の中で好きな天ぷらをご用意しました!
何人前なんだっていうくらい作っちゃいましたけど、私の作る天ぷらは冷めても美味しいんで、次の日とかでも食べられますから問題なし。
一口食べればサクとろ~な食感に語彙力なくして、もう「うまぁ」しか出てこないのですよ。
釣りは、「釣れた感動をありがとう!」という楽しみ方ももちろんありますが、私的には美味しく頂けるものはしっかり味わい、その美味さに最後感動をもらって「大成功!」だなって思ってます。
またやりたいですね! 最高でした。
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