そんな場所から!?シロアリはどこから侵入して家に入ってくるのか【真相究明】
- シロアリ駆除
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Researcher
- 木村 健人
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研究員 2009年入社
経営企画部webマーケティング課専任課長
シロアリ・木材腐朽菌に対する防蟻・防腐薬剤性能評価、木材保存について在学中に携わる。 2009年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。趣味はシロアリ飼育。
interview日本に古来から生息するシロアリたちは、度々私たち人間の家に侵入し大きな被害を与えてきました。
そんなシロアリたちは一体どうやって家に潜り込み、私達の大切な住宅を食い尽くしてしまうのでしょうか。今回は、実例を基にシロアリが家に入り込むルートを解説します。
「まさかそんな場所から!?」とびっくりする侵入経路もあるのでぜひ最後まで一緒に見ていきましょう。
日本のシロアリは土の中からやってくる
日本ではヤマトシロアリとイエシロアリの2種類のシロアリが昔から住宅に被害を与える害虫として忌み嫌われてきました。
特に、ヤマトシロアリは全国のシロアリ被害の9割以上を占め、現代においても最大の家屋害虫です。なぜシロアリが現代の住宅でも被害を与え続けられるのかというと、その理由は土を経由して家に入り込む特殊な習性があるからです。
シロアリは「木材を食べる」という印象から樹木や木材の中に巣があるイメージをお持ちの方が多いですが、それは間違い(※1)で、ヤマトシロアリは地中性の昆虫です。
必ず地中に巣があり、そこからエサとなる木材まで道を伸ばして活動をします。つまり、シロアリたちは土の中を経由して建物の内部に侵入してくるのです。
シロアリが住宅に侵入する基本パターン
エサを求めて地中を移動するシロアリが、いずれ辿り着くのが私達の住宅です。
しかし、住宅の地中にはコンクリートでできた巨大な壁、基礎が立ちはだかります。シロアリからすると万里の長城のように延々と続く巨大な壁。さすがに「ここを超えて住宅内に入ることはできないのではないか」。皆さんもそう思ってしまうかもしれません。
しかし、シロアリたちは上に向かう部隊と下に向かう部隊、横に向かう部隊に分かれて移動を続けます。
上に向かった部隊はすぐにシロアリが苦手な地上に出てしまい、道を戻らざるを得ません。横に向かった部隊は壁を伝って延々と道を伸ばすことになります。
では、下に向かった部隊はと言うと基礎伝いに壁の最下部に到達し、住宅内の床下土壌に侵入することに成功してしまうのです。
床下に侵入したシロアリは、そのまま基礎の壁を登っていき地上に到達します。地上とはいえ、床下の閉鎖空間では地中を移動するのと同じようなもので、シロアリたちは平気でそのまま上へ上へと突き進みます。
基礎の上は土台、大引、柱などシロアリの大好物である木材が無尽蔵に組まれている場所です。シロアリたちはこの木材に気づくと再び道を戻り、巣の仲間にエサの在り処を報告しにいきます。
こうして基礎の下に向かったシロアリの道は次第に太く大きくなり、大群となって私達の家を食い尽くしてしまうわけです。
シロアリにとって巨大な構造物に見える住宅の基礎であっても、シロアリは食い止めることができない、ということなんですね。
基礎の上を邁進するレアパターン
基礎の壁を上に向かったシロアリたちは、ほとんどの場合、苦手な地上に出てしまい地中に戻らざるを得ません。しかし、上に向かったシロアリにとって幸運とも言えるパターンがいくつか存在します。
外からでも容赦なく上り詰める外蟻道型
いつものように基礎を上へ向かったシロアリたち。しかし、この場所は普段と違い地上の空気が湿って滞っています。
そこには基礎に沿って物置が置かれていて、まるで地中のような環境となっていました。シロアリたちはこの居心地の良さに、そのまま蟻道を上へ上へと伸ばし続けます。
彼らが基礎と外壁の隙間から建物内部に侵入する場所を探し出すのは時間の問題です。いずれそこから住宅の壁に侵入し、木材を食い荒らすことになります。
「隙間がいい感じ」化粧モルタル・基礎断熱型
基礎の表面をきれいに整える化粧モルタル、同じく基礎の表面に断熱材を貼り付ける基礎断熱。最近の住宅ではよく見られる施工ですが、基礎との間に隙間ができやすい構造でもあります。
シロアリたちが地中の基礎を上に登っているとき、基礎の間に隙間があったらそこを通らないわけがありません。
シロアリは隙間を地中が続いていると勘違いしてしまい、基礎を上へ上へと登ってしまいます。隙間の中の環境は地中とほとんど変わらないため、簡単に壁の隙間から住宅内部に侵入してしまうのです。
このパターンでの侵入は、シロアリにとって労力とリスクが少なく、被害が大きくなりやすい傾向があります。
なぜそこに?まるごと移動パターン
「鉄筋コンクリート造の3階でヤマトシロアリの被害が出ています」
その一報を聞いたら、「おそらく乾材シロアリ(※2)の間違いだろう」とプロなら思うはずです。
翌日、現地に向かい被害箇所を見ても、それは乾燥した廻り縁の被害。
「これは乾材シロアリで間違いないかな」
しかし、そう思ったのもつかの間、ニョロっと被害穴から顔を覗かせたのはなんとヤマトシロアリの兵蟻でした。
「一体なぜここにヤマトシロアリが・・?」
私も見たことのない光景に呆然としてしまいましたが、「ならば絶対近くに土と巣があるはず」と付近を調査します。すると、部屋の外に目隠し用の生け垣が。
「土もあるしここからで間違いないだろう」
通り道となりそうな建物の入隅をチェックすると、そこには外蟻道がしっかり構築されていました。
侵入経路がわかったところで、大元は何なのか。それを探さないことには被害は止まりません。
すると、付近に不自然に置かれた丸太のオブジェに目が止まります。表面にはシロアリの痕跡が無数に残されており、これが原因であることは明白でした。
聞くと、「どこかからか持ってきてここに置いた」ということで、まさか丸太のオブジェがシロアリの巣だったとは思っていなかったようです。
私もこんな事例は後にも先にも見たことがありません。
しかし、このように人為的にシロアリが運ばれて意外な場所で被害を及ぼすことがあることを皆さんにも知っていただきたいと思えた一例ですね。
シロアリが移動するには土が必要
ヤマトシロアリをはじめとした日本のシロアリは、基本的に土に依存します。
その証拠に、地上を移動する際は必ず蟻道(ぎどう)と呼ばれる土の道を作るのです。食害を受けた木材も同様に土が付着します。
つまり、シロアリは必ず土のある場所から移動し(※3)、侵入するわけです。この特徴さえ理解すれば、シロアリがどこから入ってきたかを想像することができるようになります。
「この被害って一体どこから来たのだろう・・」
「シロアリの原因を突き止めたい」
このような思いでお調べになった方は、ぜひ今回ご紹介したシロアリの侵入経路を辿って調べてみましょう。もしかするとシロアリの通り道を見つけることが出来るかもしれません。
※1レイビシロアリ科のシロアリは樹木や木材中に巣がある
※2乾材シロアリ:レイビシロアリ科の仲間で乾燥した木材を食害する
※3例外として外来種のアメリカカンザイシロアリは飛来して木材に侵入する習性を持つ
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巣は地中に埋設された木材や切り株の根元にあるのが一般的です。規模が大きくなるとエサを求めて別の場所へ活動範囲を広げます。