家の敷地でシロアリが湧きやすいポイントはどこ?シロアリの専門家に聞く
- シロアリ駆除
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Researcher
- 木村 健人
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研究員 2009年入社
経営企画部webマーケティング課専任課長
シロアリ・木材腐朽菌に対する防蟻・防腐薬剤性能評価、木材保存について在学中に携わる。 2009年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。趣味はシロアリ飼育。
interview「シロアリなんて見たことない」
恐らくこれが日本人の大多数の意見だろう。ほとんどの人は自分の生活とシロアリは関連がない。近所でも聞かないし、友人・知人とも話したことはほとんどない。シロアリ被害はなんとなく怖いけど、正直自分とは関係ないと感じているのではないだろうか。
だが、私たちの意見としては「シロアリは木材がある場所にはどこにでもいる」というのが共通認識。これは営業トークでもポジショントークでも何でもなく、真面目な話だ。
そこで今回、白蟻専科で1番のシロアリハンターである田中さんに一般住宅でシロアリの痕跡を見つける極意を解説してもらうことにした。
「これはハラビロカマキリのメスですね」と現地に到着したと同時に昆虫を見つけるシロアリハンターの田中さん。
カマキリにはハリガネムシという有名な寄生虫が体内に入っていますが、お腹を触ると居るか居ないかがわかるんですよ。触ってみますか?
シロアリは好きな私だが、実は昆虫が基本的に苦手。若干顔が引きつる私を尻目に解説を続けてくれた。実は田中さん、学生時代は研究対象をニホンミツバチとする傍ら、クワガタ類のブリードをしたり、70種を超えるアリ類の飼育をするなど、昆虫の達人でもある。
もちろん現在も実験室内で6種類のシロアリを飼育するなど、田中さんはシロアリ採集についてもかなりの腕前です・・!
今回お伺いした家がこちらの家屋
今回、シロアリの痕跡探しでやってきた物件は関東南部エリアのこちらの物件。数十年の歴史がある住居だ。
実は昨年にもこちらの物件にお伺いしてYouTubeチャンネル「シロアリ駆除Channel」の撮影をしている。そのときにシロアリの生息を確認しているのだが、今回は改めてより詳しい解説をしてもらった。
まずはお庭の木材をチェック
じゃあまずはお庭のエクステリアですね。この物件のお庭は比較的広めなのでシロアリはうじゃうじゃいるはずです。恐らく何コロニーも巣があると思います。
それじゃあ、そこに転がっている竹製品にはシロアリが付いていたりしますか?
シロアリは竹を食べないわけでは無いですが、あまり好んで食べる印象はないですね。ここの竹もシロアリは居ないですし、むしろ蜘蛛やアリなどの巣になっていることが多いです。
むしろ、こっちの枕木が危ないです。枕木には防腐・防蟻処理がされていますが、切断面から内部にシロアリが入り込むことがよくあります。
ここにある枕木は表面的なシロアリ被害は見られなかったが、枕木は地面に接地している面積が広いため蟻害を受けるリスクが高いとか。お庭のエクステリアとしてよく見かける分、注意したい場所と言えそう。
枕木よりももっと危ないのがこういった木材ですね。枕木は加圧注入材(※)が使われていますが、普通の木材は無処理なのでほぼほぼ必ずシロアリが付きます。
※加圧注入材…防腐防蟻剤を木材内部まで注入した木材のこと
確かに、この木材をよく見るとシロアリ被害が見つかった。表面的には被害が無いように見えても木材の中に入り込んで食い荒らすのがシロアリの特徴だ。
ちなみに、上写真中央に見える縦長の物体。これはジグモの巣なのだとか。シロアリが通り道として作る蟻道(ぎどう)と見た目が似ているので間違いやすいという。
筒状の蜘蛛の巣に土がくっついていて、触ると柔らかいので蜘蛛の巣だとわかると思います。シロアリの蟻道は硬い構造物なので違いは明確ですね。
あ、これはシロアリの被害じゃないですよね。これは私が学生のときに扱っていた褐色腐朽(※)だと思いますが・・。
※褐色腐朽…木材を腐らせる菌である褐色腐朽菌による劣化状態
そうですね。シロアリの食害痕にも見えますが、劣化の仕方がちょっと違います。シロアリは年輪に沿って空洞ができますが、褐色腐朽は賽の目状に腐れが進行します。
この腐れ方は特徴的ですよね。シロアリではないですが、腐朽菌でも木材強度は大きく低下するので建築物で見つかった場合は要注意です・・!
敷地の樹木を見る
次に樹木の茂る家の裏手を見てみましょう。こういう場所で見るべきポイントは切り株や枯死した樹木ですね。
それじゃあ、こんな切り株にはシロアリが住み着いているんですかね?
この切り株はまだ腐朽が進んでいないのでシロアリはまだ来ていないと思います。硬すぎるとシロアリは好まないんですよね。
シロアリは木材の好みがあり、腐朽の有無でも好みが分かれるとのこと。ここにある切り株はとても硬く、今のところシロアリがあえて餌とする必要が無いのかもしれない。ただし、地中の根にはシロアリが既に住み着いている可能性はあるという。
腐朽が進行してシロアリに食べ尽くされた切り株がこちら。去年のYouTube撮影ではシロアリが生息していたのだが、既に場所を移動してしまったようだ。
と、シロアリの痕跡を探していると、木の根元で何かを見つけた田中さん。
オオスズメバチがいたので捕まえました。
え、ちょっと待ってください。素手で触って何してるんですか・・・!?
この子はオオスズメバチでもオスだから大丈夫ですよ。オスには毒針が付いていないんです。
いやいや、普通に刺そうとしてるじゃないですか・・?
針が無いのに刺そうと頑張ってるのが可愛いんですよね。オオスズメバチを触れる機会なんて滅多にないから触ってみてください。
おぉぉ、ふわふわしていて意外とかわいいかも・・・
※オオスズメバチのメスとオスを見分けるのは難しいため、絶対に真似をしないでください。
オオスズメバチが元々いた場所に戻す田中さん。止まっているハチをぱっと見分けて捕まえるのは「ハチの研究をしていたから」とのこと。絶対に私たち一般人が真似することはできないだろう。
家の建物周りを調べる
建物の周囲も意外とシロアリが住み着いています。例えば、コンクリの型枠が残っているとそこにシロアリが付いたりするんです。
これは通気口の切り欠きに残されていた木枠ですが、シロアリの食害を受けた跡がありますね。
こういう木枠って最初に取り除くんじゃ無いんですか?
実は駐車場や犬走り(※)の型枠に使われる木材はそのままの場合が結構多いんです。建物から近い場所にあるので、ここから被害が広がる危険性があるんですよね。
※犬走り…家の周りに設けられた1mほどの細い通路のこと
なるほど・・・
最近の建物では少なくなったが、上写真のような広縁(ひろえん)下の空間もシロアリが住み着きやすいポイント。やはり、隙間に荷物を入れずに風通しを良くするのがポイントだそうだ。
それから、外壁に木材を使っている場合はそこもシロアリが潜んでいることがあるので要注意です。
これは下見板張りの外壁ですが、よく見るとシロアリ被害が見られますね。
これはここに巣がある訳ではないですよね?
ですね。土壌中から基礎コンクリートを伝って壁に到達しているんだと思います。
中を覗くと土が詰まっている。食害箇所に土を持ち込むのもシロアリの特徴だ。
短時間でもシロアリの痕跡は多数見つかった
今回、住宅の敷地でシロアリの痕跡を探してみたが、予想に反して多数の痕跡を見つけることができた。「敷地の広い住宅だからでしょ?」という指摘があるかもしれないが、それでも建物のそばに被害があった点からしてもシロアリは家の近くに潜んでいるのは間違いないだろう。
シロアリは土と木材があれば本当にどこにでもいる生き物ですから、地面に家を建てている以上、全ての建物に被害のリスクがあるんです。
だからと言って、家の外にいるシロアリたちも枯死した樹木を土に還すために一生懸命生きている訳ですから、そう簡単に駆除してしまえ!とは言えません。
ですから、不用意にシロアリを駆除しないためにも、予め建物に侵入させないように予防をしておく、という考え方が本当に大切なんだと思いますね。
確かに、シロアリからしても人の建物を食い尽くすために家に侵入している訳ではないのだから、シロアリが家に入ってくるのを遠慮してもらう対策を予め打っておくことは大切な考え方なのかもしれない。
それにしても、素手でスズメバチを捕まえるなんて本当に恐ろしい人だ・・・。
当取材の前に撮影した動画がYouTubeチャンネル「シロアリ駆除Channel」で公開中です。こちらも併せてご覧ください!
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