築5年の床下シロアリ調査に同行!プロは何を点検しているの?

  • シロアリ駆除

Researcher

研究者プロフィール
木村 健人

研究員 2009年入社

経営企画部webマーケティング課専任課長

シロアリ・木材腐朽菌に対する防蟻・防腐薬剤性能評価、木材保存について在学中に携わる。 2009年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。趣味はシロアリ飼育。

interview

「シロアリの点検ってちょっと胡散臭い・・」
「シロアリは怖いけど、業者も怖い・・」

おそらく一度はこのような不安を抱いたことがあるのではないだろうか。実際、私たちがお客様のお家へ伺うと、同様の話をされることが非常に多い。

ただ、ほとんどの業者がシロアリ駆除に対して真面目に向き合っているのは間違いない。お客様が抱く胡散臭さは、ごく一部の悪質業者の存在がクローズアップされてしまっているからではないだろうか。

そこで今回、シロアリ調査のプロである加藤さんに同行し、一般的な戸建て住宅でのシロアリ点検の方法や流れについて詳しく解説してもらうことにした。

加藤さんは株式会社テオリアハウスクリニックのシロアリ調査スタッフとして10年の経験をもつ。公益社団法人日本しろあり対策協会のしろあり防除施工士や蟻害腐朽検査士の資格をもつシロアリ調査のスペシャリストだ。

木村

加藤さんは各営業所の所長を歴任して、現在は床下断熱事業の所長も務めている床下のスペシャリストでもあります・・・!

加藤

よろしくお願いします・・・!

今回お伺いした家はこちらの戸建て住宅

今回、シロアリ調査を実施する物件は埼玉県にあるこちらの戸建て。築数年の比較的新しい木造住宅だ。

加藤

新築の建物には通常5年間のシロアリ保証が付いています。なので、今回はこちらの物件が5年を経過したと仮定して調査をしていきます。

木村

シロアリの調査は5年が経過するときに行われますけど、それが何故かと言うとシロアリ保証が切れるタイミングだからなんですよね。

加藤

そうなんです。実は5年目に点検を行うのにはちゃんとした理由があるんです・・・!

なぜシロアリの調査があるのか疑問に思う方もいるかも知れない。実は新築からの保証や駆除工事の保証が5年であるのがその理由で、5年間のうちに何か問題が起きていないかを確認するために実施されるのだ。

シロアリ調査はどういう流れで行われる?

加藤

まず、シロアリの調査で見る場所というのは、外回り、玄関、床下の3つに分けられます。その中で特に重要なのは床下ですが、先に外回りと玄関を見て環境を把握することが大切ですね。

木村

外回り→玄関→床下という流れで見ていくのは、そういった理由からなんですよね。

加藤

そうです!基本的な流れはそれで間違いないです。ただ、被害があるときは被害箇所を優先して見たりもしますね。

シロアリ調査というとどうしても床下点検をイメージしてしまうが、実際には家の外周や玄関など建物を総合的に診てもらうことができる。家周りや玄関などに荷物がたくさんある方は「事前に片付けをしておくのがおすすめ」とのこと。

外回りの調査は何を見る?

加藤

それじゃあ外回りから見ていきましょう!まず基礎の異常を見て回ります。

木村

基礎のひび割れとか汚れとかですよね?

加藤

そうです。例えばこういったひび割れですね。基礎の表面には化粧モルタルが薄く塗られているのですが、ひび割れがあるとシロアリが入れる隙間ができるんです。

※化粧モルタル…基礎表面を綺麗に仕上げるために用いられる仕上材

基礎と化粧モルタルの間には隙間ができることがある。ひび割れがあると雨水の侵入などにより隙間ができる可能性も高くなるとか。このあと床下を点検する際に、ひび割れの裏側を重点的に確認できる点が外周を先に点検するメリットなのだそうだ。

加藤

実はシロアリって0.6mmほどの隙間やスペースがあれば出入りができてしまうんです。私たちにとっては隙間に見えなくてもシロアリなら通れてしまう場所はいくつもあります。

加藤

外周で他に見る場所は室外機や物置ですね。これが基礎にぴったり付いていると危険です。シロアリは暗がりや空気が動かない場所を好むので絶好の侵入ポイントになります。

木村

室外機の場合、ドレンホースから水が排水されるので湿度が高くなるのも良くなさそうですね。

加藤

シロアリって湿気が多い場所を好むので本当にその通りですね・・!

加藤さんの点検を後ろで見ていると、カメラで撮影しながら点検を行っているのが印象的だった。これは問題のある場所などをまとめ、最後にご報告するために大切なのだとか。

と、一通り外周を点検したところで少しばかり気になるポイントを見つけた、と加藤さん。

加藤

この建物だと、ポーチのこの柱が危険ですね。

木村

柱は外壁とタイルで見えてないですけど、これでも危ないんですか・・・?

加藤

むしろ見えてないから危ないんです。タイルの裏側の隙間を伝って地中から上がって来ると、気付けないまま柱に被害がでてしまうんですね。

木村

なるほど、そういう場合、どうやって気をつければいいんですか・・?

加藤

見て気づくのは難しいので、新築時の予防処理と定期的な予防処理を確実に実施することが大切ですね。あと、雨漏りの影響も受けやすいので、外壁のメンテナンスも忘れずにすると安心です。

ちなみに、ポーチはシロアリの侵入経路が他にもあり、例えば上写真のタイル立ち上がりと基礎の間からもシロアリが上がってきやすい。そういった意味でも外周を調査することは大切なようだ。

玄関の調査は何を見る?

加藤

玄関もポーチと同じような場所を見ていきます。特にドアの枠や上がり框などタイルと接している木材に被害が無いかをチェックしますね。

加藤

方法は、手で実際に触ってみて違和感が無いかを確認したり、継ぎ目などに被害の痕跡(土など)が無いかを見たりします。簡単に見えるかもしれませんが、ある程度の経験が必要なんです。

玄関は現代の住宅でもシロアリ被害が多い場所だという。それは、床下空間が無くシロアリが地中から伝ってきやすい構造にあるそうだ。床下を見ただけでは被害に気付けないこともあるため、点検時に絶対に見ておくポイントだとのこと。

床下の調査へ

外回り、玄関と調査が終わったら、室内の床下点検口から床下の調査を行う。点検口はクローゼットやキッチン、洗面所の床に設置されている事が多い。

加藤

床下は専用の道具や衣服を着用して点検します。室内とは言え、土埃やゴミが堆積して外と同じですからね。

道具は厚い布製のツナギ、帽子、防塵マスク、長靴、作業用手袋、ライト、カメラは必須。さらに図面やペン、マイナスドライバーがあると調査を行いやすいそうだ。

加藤

それから、床下に入るときはビニールで養生をします。

※養生…破損防止や汚れ対策のこと

木村

え、床下に入るだけなのにこんなに囲いを作るんですか・・・?

加藤

そうですね、出入りの際に土ぼこりで汚してしまう可能性がありますし、床下の塵が舞い上がってしまうこともありますので。これをやるかやらないかで大違いですよ。

木村

なるほど・・・

加藤

それじゃ、準備ができたので床下に入ってみましょう!

加藤

床下には足から入れて頭は最後に入れます。うつ伏せになるように進入する感じですね。

私も7年ほど床下調査や工事の経験があるので分かるが、床下は想像以上に狭い空間だ。久々に入ってみるとかなりの圧迫感がある。たまに「自分で床下点検をしたい」という方もいるが、無理はしないに越したことはないだろう。

加藤

久しぶりの床下どうです・・・?結構居心地いいですよね・・・!?

木村

え、いやこんなに狭かったでしたっけ・・・?

加藤

このお宅でだいたい床高40cmくらいなので、一般的な広さですよ。

木村

え、本当ですか・・・でも時間が経つと確かに落ち着く空間かも・・・。

と、軽快に床下を動いて点検を始める加藤さん。基本的に床下は木材が露出しているので、その木材にシロアリが付いていないかを確認するのが床下調査の流れとなる。

加藤

築5年ほどの住宅だと、新築の薬剤効力が残っていますので蟻害や腐朽は滅多に無いのですが、入念にチェックしていきます。

木村

え、じゃあ何で床下を見る必要があるんですか・・?

加藤

その効力が5年で切れるからなんですね。現時点では被害が無かったとしても、その兆候などは見つかることがあるんです。

加藤

例えば、金属のセパレーターの隙間や水抜き穴ですね。ここは外と繋がっているのでシロアリが侵入するポイントになりやすいんです。

上写真はセパレーター金具の隙間。基礎を作るときに使う金具なのだが、ここからシロアリが侵入する事例が実際にあるのだとか。確かにここから入られていたら床下に入らないと分からないだろう。

加藤

それから、クモなどシロアリ以外の生き物の生息もしっかりチェックします。これは床下空間が生き物にとって住みやすい環境になっているかを評価できるからですね。

通れる場所はくまなく点検する加藤さん。シロアリ以外にも、基礎のひび割れや配管からの水漏れなどが無いかもチェックするのだとか。

加藤

せっかく床下に入って調査しますので、シロアリだけでなく何かしら不具合があればご報告していますね。

木村

おお、それは頼もしい・・・

加藤

ここは玄関の框の裏側です。この物件では被害が無いですが、築年数が経っている家では結構被害が見られるポイントですね。それから、床下では写真もたくさん撮っておきます。

木村

確かに、写真が無いと最後のご報告に説得力がありませんからね。

床下の調査は移動が大変に思えるが、プロなら20分もあればしっかり見てくれる。この物件にはもちろん被害は無かったが、リスクや現在の状態を把握するためにも定期的な床下調査は必要だろう。

調査後のご報告

加藤

シロアリ調査は点検だけではなく、しっかりご報告もおこないます。こんな感じで写真つきの報告書を出してくれる業者も多いですよ・・・!

木村

こういう写真があるとやっぱ安心ですよね〜。

加藤

そうですね!写真はデジカメなどの画面からでも確認できるので、報告書に載せきれないものも全部お見せすることが可能です・・・!

木村

なるほど。

加藤

それから、今後もシロアリの保証を継続したいという方のために、シロアリ予防工事のお見積りも作成しています。

木村

シロアリ被害が無くても予防的な意味で保証を付けるってことですね。ちなみに、この家だといくら位なんです?

加藤

この建物だと1階面積が65㎡なので、税込14万円ほどですね。

木村

それで5年間、ひと月あたり2300円の保険料って考えれば妥当な金額ですね。

木村

ちなみに、シロアリ調査を依頼する上で注意すべき点って何かあります?

加藤

あ〜、まず絶対に駄目なのは訪問販売の業者さんですね。こっちが呼んでいないのに家に来た業者は全て断ったほうがいいです。

加藤

それから、面倒でも自分でネットなどから調べて、良いなと思える業者を見つけることですね。

やはり、訪問販売の業者は詐欺の可能性があるため止めたほうがいいだろう。また、今だと口コミやSNSの評判なども調べやすいので、自分である程度は調べることも大切とのこと。見えない床下を診てもらうのだから、自分が納得できる業者に依頼するべきとのことだ。

正味1時間程度の点検だったが、同行することで非常に細かいところまで見ることができた。シロアリ調査をしたことが無い人にとっては不安を払拭するきっかけにはなったんじゃないかと思う。

シロアリ防除をする身として、シロアリ調査に対する偏見や不安が少しでも減るきっかけとなれば幸いだ。

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