住宅でシロアリ被害が多い場所ランキングTOP10
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目次
Researcher
- 木村 健人
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研究員 2009年入社
経営企画部webマーケティング課専任課長
シロアリ・木材腐朽菌に対する防蟻・防腐薬剤性能評価、木材保存について在学中に携わる。 2009年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。趣味はシロアリ飼育。
interviewシロアリといえば家を食い荒らす害虫として知られていますが、家を食い荒らすことは知られていても、家のどの場所を加害するのかは一般的に知られていません。
基本的にシロアリ被害は見えにくいところで進行し、気づいたときには大変甚大な被害になってしまいます。つまり、シロアリが加害しやすい場所を事前に把握して、早期発見・早期対策に繋げておくことが重要です。
そこで今回、白蟻専科(運営:テオリアハウスクリニック)での1年間の調査をもとに、445件を1件1件を精査した上で「シロアリ被害が多い場所ランキング」を作成しました。その中から当記事ではトップ10を発表していきます。
シロアリ被害が多い場所ランキング
第10位:バルコニー・ベランダ
件数:3
10位は意外にも建物の外に作られるバルコニー・ベランダです。バルコニーやベランダは、構造上雨が降ると水が床面などに吹き込みます。新しいバルコニーであれば問題ないのですが、経年劣化によって防水機能が低下すると水が隙間から染み込み構造内部に水が溜まることがあるんですね。
シロアリは水分を好むので、バルコニーで被害が発生する際には必ず雨漏りが関係しています。外壁内部に水分が伝わり、基礎から壁内を経由してシロアリが侵入するケースが多いです。
今回の件数は3件と少ないですが、被害が生じてから発見に至るまでに相当時間がかかることもあるため、潜在的には数字以上に被害が多い場所ではないかと思われます。
バルコニーの被害は他の場所と比較しても甚大になりやすいため、定期的な防水工事が必要ですね。
対策方法
・定期的な防水工事
第9位:階段下
件数:7
階段下は和室の押し入れのように収納スペースとして利用されることが多いですが、シロアリ被害が多い理由は構造上の空気の流れの悪さにあります。
階段下の床下基礎は、3方向が囲まれていて袋小路のような形状になっていることが多いです。そういった空間に空気が滞ってしまうと、湿度が高まりやすくなってしまうんですね。その結果、床板や雑巾摺りに被害が及ぶことがあるのではないかと考えられます。
また、外壁側に扉がある外部収納型の階段下収納では、床が土間コンクリートと同じ作りになっていて、コンクリートの特性上生じる基礎際の隙間からシロアリが侵入しやすいです。
シロアリ被害がある場合、普段の開け閉めがほとんどなく密室空間になっていることが多いため、定期的に荷物の整理や換気を行うことが重要ですね。
対策方法
・床下換気と湿気対策
・床下の防蟻処理
・階段下物入れの整理・換気
第8位:台所
件数:12
台所でのシロアリ被害が多い理由は、建物の北側に設置されることが多く湿度が高まりやすいためではないかと考えられます。さらに、窓下の壁内結露で多湿になった壁体内に巣を作られることも多いです。
実際によくある話としては、台所のシンクや窓の隙間から羽アリが大量発生した、というものですね。これはまさに台所周辺が多湿になって巣を作られた典型例です。
定期的な防蟻処理を行うのはもちろんですが、湿度が高い場合は湿気を抑える対策も必要ですね。
対策方法
・シンク下や配管回りの定期点検・防蟻処理
・水漏れの早期修理
第7位:外壁・窓
件数:14
外壁側でのシロアリ被害は兆候が目立ちにくいため発見が遅れがちです。発見された時には被害が広がっていることがよく見られます。
典型的なパターンとしては、窓枠や窓台に被害が発生していることが多いです。これは雨漏れによるもので、窓サッシの隙間やクラックから雨水が侵入し、シロアリ被害が広がる原因となっています。
また、外壁へのシロアリ侵入ポイントとして、基礎外断熱と化粧モルタルが挙げられます。基礎外断熱は基礎に断熱材を貼り付ける施工方法で、シロアリにとっては基礎と断熱材の間が侵入しやすい経路となってしまいます。
近年では、基礎断熱にもシロアリ対策が施されるようになっていますが、それでも侵入が完全に防げるわけではありません。化粧モルタルも同様で、経年劣化により表面が浮き上がり、シロアリが侵入する経路となることがあります。
シロアリの観点から考えると、基礎の表面に装飾や断熱を施さず、シンプルに仕上げることが最も有効と言えます。
対策方法
・外壁の定期的なメンテナンス
・基礎断熱や化粧モルタルを採用しない
第6位:洋室
件数:22
一見、シロアリ被害と縁の無さそうな洋室やリビングが第6位という結果に。被害が多い理由は、建物の1階面積内での割合が大きいことが要因ではないかと思われます。
最近の建物では和室を採用せず洋室にすることが多く、リビングも含めると全体の大部分を占めることが一般的です。このような面積的な大きさから、被害の発生率も高くなる傾向にあるのではないでしょうか。
また、洋室やリビングは長時間滞在する場所でもあり、被害に気づきやすいという特性もありそうです。ただし、洋室やリビングで被害が見つかった場合、他の場所にも被害が広がっていることが往々にして見られます。
そのため、洋室やリビングで被害が見つかったら、それが広範囲に及ぶ可能性を考慮する必要があるでしょう。
洋室の場合、他の部屋に原因があり、その被害が洋室にまで及んでいるパターンが多いですね。
対策方法
・床下の定期的な点検と防蟻処理
第5位:トイレ
件数:26
トイレでは、巾木や窓枠などにシロアリ被害が多く見られることがあります。この原因にはいくつかの要因が考えられますが、階段下と同様に基礎が3方向から囲まれた構造による高湿度の環境が一番に挙げられます。
基礎左角をよく見ると蟻道が伸びているのがわかる
高湿度の環境はシロアリにとって非常に魅力的で集まりやすい場所です。また、配管などから蟻道を作って登ることができるため、湿気さえあれば容易に侵入が可能なのでしょう。
基礎が囲われやすい部分では、強制的に換気を促進したり建築時に良好な通風が確保されるように設計することが重要です。
対策方法
・トイレ回りの床下換気・湿気対策
・床下の防蟻処理
第4位:和室・押入れ
件数:47
和室は湿気と無縁のように感じられる場所ですが、実はシロアリ被害が頻繁に見られる場所でもあります。その理由の一つは、他の場所に比べて湿気を溜めやすい構造にあるからです。
特に押入れに被害が多く見られます。押し入れの内部は薄いベニヤで覆われた単純な箱のような構造をしています。そのため、床下からの湿気が侵入しやすく、密閉された押入れは高湿度の空間になってしまうわけです。
押入れの扉を頻繁に開けて換気を心がけることが重要ですが、多くの場合は閉めたままであるため、湿気が滞留しやすい状態になっています。また、荷物を過剰に詰め込むことも空気の流れを妨げ、被害のリスクを高めてしまっている可能性があります。
また、畳は湿気が高ければ吸収し、乾燥しているときには湿度を放出する機能を持ちます。湿度が高い時期は床下と畳の間がジメジメしやすく、被害が多く発生するおそれがあります。
新築ではあまり問題になりませんが、中古物件を検討している場合は特に和室部分のチェックが大切ですね。
対策方法
・畳の定期的な乾燥
・押入れの整理と換気
・床下の防蟻処理
第3位:浴室・洗面所
件数:76
浴室にはユニットバスと在来浴室の2種類がありますが、被害が多いのは昔ながらのタイル貼りの在来浴室です。
在来浴室は基礎で囲まれた中に砂利や土を入れて作られており、密閉に近い構造を持っています。そのため、浴室内の水分がタイルの目地などから浸透し、地下空間が常に高湿度の環境となりやすいです。
先にも述べたとおり、シロアリにとって密閉された高湿度環境は楽園のような場所と言えます。そんな場所に土台や柱、下地板などの木材が密接しているため、シロアリが巣を作りやすく被害が多く発生してしまうのです。
また、浴室と洗面所は隣接していることが多いため、洗面所も浴室と同様に被害に遭うケースが多いです。洗面所は浴室からの湿気に影響されやすい場所なので、自ずと湿度が高くなってしまいます。
これらの特性から、浴室や洗面所は他の部位と比べてもシロアリ被害を受けやすい場所と言えるでしょう。
浴室を使用したら換気を徹底して湿潤な状態を作らないようにすることが大切ですね。
対策方法
・浴室や洗面所の換気
・定期的な防蟻処理
第2位:玄関・勝手口
件数:78
お客様からの問い合わせ数No.1の玄関が当ランキングでも2位にランクイン。やはり玄関や勝手口は、建物内で最もシロアリ被害が頻繁に見られる場所と言えるでしょう。
特に目立つ被害箇所としては、ドア枠や上がり框が挙げられます。木製のドア枠は土間コンクリートに接する形で設置されており、地中と直結しているため常にシロアリの標的となりやすい場所です。
上がり框の被害に関しては、主に2つのパターンがあります。一つはタイルの裏側を通過して侵入する場合、もう一つは床下から直接侵入するパターンです。
玄関は基本的にタイルで覆われており、その下の閉鎖空間は土や砂利になっています。シロアリにとっては閉鎖空間を利用して框などの木材にアクセスしやすい環境と言えるのです。
床下から侵入する場合は、框部材がコンクリートブロックや土留板の上に置かれているため、そこを登ってきたシロアリによる被害がすぐに広がってしまいます。
玄関の構造は今も昔もほとんど変わっていないため、築浅の物件でもシロアリ被害が発生することがあります。「玄関の構造を変えてシロアリの侵入を防ぐ」という対策は実現困難なため、定期的な予防措置をしっかりと行うことが重要ですね。
浴室と同様に玄関も乾燥を徹底することが大切。掃除で水を撒くとタイル目地から水が染み込んでしまう。
対策方法
・玄関の定期的な防蟻処理
・乾燥の徹底
第1位:床下
件数:156
2位と倍近い差をつけた第1位が「床下」の被害です。今回の集計では圧倒的に多くの被害が寄せられる結果となりました。
なぜこんなにも床下での被害が多いのかというと、シロアリが建物に侵入する経路を知れば「そりゃそうだ・・」となるはずですね。ここで言うべきではないのですが、我々シロアリ業者目線で見れば出来レースのような1位と言って良いかもしれません。
そもそも、シロアリは常に土の中で活動し地上に出ることはほとんどありません。そのため、建物への侵入経路としては、床下から土を経由して侵入することが圧倒的に多いのです。
床下の環境は室内よりも湿度が高く、シロアリの理想的な侵入ポイントとなります。また、床下空間には木材がむき出しになっており、シロアリにとってその木材が「地中に埋まるお宝」に見えているのです。
床下被害の恐ろしいところは、普段の生活では見えないため、被害が進行していることに気づきにくい点です。室内側に被害が出てきて初めて気づくケースもありますが、室内に兆候が現れないまま床下だけで甚大な被害が進行することも少なくありません。
床下は「被害が起きてから対処する」という考え方では対応しきれないため、定期的な予防措置が重要です…!
対策方法
・床下の防蟻処理
まとめ|ランキング表
シロアリ被害は家のさまざまな場所で発生する可能性がありますが、特に湿気がこもりやすい場所や木材が多い場所は注意が必要です。以下に、改めて今回のランキングを表にまとめまてみました。
順位 | 被害場所 | 件数 |
---|---|---|
1位 | 床下 | 156 |
2位 | 玄関・勝手口 | 78 |
3位 | 浴室・洗面所 | 76 |
4位 | 和室・押入れ | 47 |
5位 | トイレ | 26 |
6位 | 洋室 | 22 |
7位 | 外壁・窓 | 14 |
8位 | 台所 | 12 |
9位 | 階段下 | 7 |
10位 | バルコニー | 3 |
ご覧のとおり、ランキングした場所の多くは湿気や水分、または密閉、というキーワードが当てはまります。シロアリ被害を未然に防ぐためには、これらのキーワードを通してシロアリがどうやって建物に侵入し、どういう場所を好むのかを理解することが第一歩となります。
それらを理解した上で、定期的な点検と対策を実施することがやはり重要と言えるでしょう。
参考情報
有効案件数のべ445件(2023年1月〜10月)
株式会社テオリアハウスクリニック調べ
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