大阪ガスケミカルの研究所に潜入して防蟻剤の最先端を見てきました。
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Researcher

- 田口 正訓
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研究員 2007年入社
埼玉営業所テクニカルチーム
大学では在来草本植物の研究に携わり、自然環境と生物の相互関係を学ぶ。 2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。 休日も生き物や植物の写真撮影に勤しむ。
interview白蟻専科のミーティングでふと、防蟻薬剤の製造をしている大阪ガスケミカルさんに見学させて頂くのはどうだろうか?という意見が。特に、普段から現場に出て薬剤を扱う私としては、知見を深める良い機会だという事で見学が決定。
後日、大阪ガスケミカルさんに問い合わせたところ快諾をいただき、見学会の実施が正式に決定しました。
いざ、大阪へ!
メンバーは田口、橋本、木村の3人。
橋本、木村はプライベートで何度か大阪を訪ねた事があるそうですが、正直、私は大阪に行くのは初めて。おじさんになっても、知らない土地に行くのはドキドキしますね。

とは言え、今日は旅行ではありません、知見を深める為の研修です…!
なので気を引き締めて大阪に向かうことに。

現地に到着し、まず案内されたのは樹脂の研究開発を行っているフロンティアマテリアル研究所。
最初、防蟻薬剤・木材保存剤を製造している会社が樹脂の製造を行っている事が正直、結びつかないと思いました。「どういう事なんだろう?」と。
企業秘密があるため多くは語れませんが、特殊な機械で新たなプラスチックを生成したり、その性能を評価したりしているとのこと。化粧品の開発も行っているとの事で、守備範囲が広いですね。

その後、商品開発センターに案内され、各分野の研究設備・資材の見学へ。
木材保存試験のための木材の説明では、試験を実施したものはシロアリの食害や木材腐朽菌の増殖が抑えられておりました。

スギ・ヒノキ等様々な樹種の木材の説明を受ける3人。
そしていよいよシロアリの飼育部屋へ。私が一番楽しみにしていたシロアリの登場です。飼育されていたのはイエシロアリ。この日はシロアリ担当の方が、沖縄の野外試験場に出張との事でいらっしゃらないとの事。

残念ですが、次回は沖縄の試験場もぜひ行ってみたいですね。
写真では公開できませんが、飼育部屋は1年中温度が28℃前後で保たれています。蒸し暑く、さながら熱帯植物園にいる気分。高温多湿を好むイエシロアリの活性が高まるようにする為です。
人為的に温度が管理された環境ですが毎年羽アリが発生するそうで、その時期が野生の羽アリと同じ6月下旬なのだとか。
季節感のない、外界と隔てられた飼育ケースで、シロアリはどうやって暦を知るのでしょうか?自然の神秘に興味が尽きません。
見学のあとは座学も
各施設を見学した後は私たち3人のためだけに座学を用意していただきました。

そこでお話いただいた大阪ガスケミカルの事業や研究開発についてもご紹介します!
大阪ガスケミカルは、大阪ガスの石炭化学技術・武田薬品工業の医薬品関連技術を基盤とした、ニッチな市場で国内や世界のシェアNO.1を獲得するような高機能化学品を製造販売する化学メーカーです。防蟻剤・木材保存剤の事業は武田薬品工業から2005年に大阪ガスグループに加わり、2015年に大阪ガスケミカルに統合されています。
炭素繊維の事業も行っていて、その一つに新幹線の軽量吸音断熱材も製造しています。午前中に乗った新幹線で、まさか大阪ガスケミカルの技術が採用されていたとは。驚きました。
関わりが深い防蟻剤と木材保存剤についても学びました。

防蟻剤・木材保存剤は世界遺産・国宝・重要文化財の保全に用いられていて、国内実績NO.1です。私が旅行で観に行った、岩手県の中尊寺金色堂も実績に含まれていました。
その防蟻剤・木材保存剤を一般住宅向けに開発・設計したものを普段、私は使用しています。薬剤の有効成分を樹脂製造の技術でマイクロカプセル化する事が可能となり、高い効力と人や環境への負荷低減を両立しています。

樹脂を製造している事と、防蟻剤の製造のつながりがここで理解できました。
樹脂の技術+薬剤製造の技術=安全で確実に効く薬剤が完成したのです。
その中で最も気になった技術は、マイクロカプセルの粒子が不均一だという事です。粒子の大きさは均一ではなく、あえて大きさを変化させることで、土壌表面に薬剤層を形成し、即効性と持続性の両立、シロアリ侵入の阻止が可能となっております。有効成分が水に溶出しやすいネオニコチノイド系の弱点も抑制され、環境への負荷も低減されています。
マイクロカプセルにおいて、一頭地を抜いている訳です。
しかし、近年、そのネオニコチノイド系の風当たりが強くなっているという事実もあります。欧州ではミツバチの集団死との関係も示唆されています。
そこで、マイクロカプセルの技術だけに頼るのではなく、新しいタイプの薬剤も製造するようになっています。

多角的な事業展開や視点は学ぶべきところが多いと実感します。
異業種のサービス・技術を掛け合わせる事で新たなモノ・技術・事業展開が生まれ、会社・組織として強くなれると思うのです。

最後に、木材保存剤の性能を確認する為のログハウスにご案内されました。
10畳程のログハウスで、床板や外壁に木材保存剤が施工されており、施工区域と未施工区域で明らかに差が出ていました。あらゆる木材保存剤を使用し、試行錯誤を繰り返してデータを収集しているそうです。
やはり、実験できる場所とデータを蓄積出来る事は大きな強みですね。
企業秘密があるため研究施設の詳細は公開出来ませんが、充実した内容でした。薬剤製造の現場を実際に見学する事が出来て、大変有意義な時間になったと思います。
これで、お客様に対しても、より自信をもって薬剤の安全性、効力について説明できます。見学および取材をご快諾いただいた大阪ガスケミカルさんには大変感謝しております。
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