シロアリ被害かどうか迷った時はココを見る!シロアリ被害の特徴について

  • シロアリ駆除
  • 生態

Researcher

研究者プロフィール
橋本 実樹

研究員 2007年入社

DX 推進室 専任課長

埼玉県で初のクマゼミの採集実績あり。大学では昆虫類、主にセミ類の分布調査に携わる。 2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。熱海起雲閣で床下ロボット調査、代々木能舞台や国際子ども図書館の駆除など経験。 趣味はハチや魚類の採集、飼育。

interview

シロアリの食害とは

木材劣化の要因は2つだけ

シロアリ=家屋害虫と言われる所以は何でしょうか?

そう、家屋の構造部材であり建築材料である木材を食べるからです。

正確には、木材を齧って含まれる難分解性のリグニン、セルロース、ヘミセルロースを消化してしまうので結果的にボロボロになり、強度が下がります。

建材は強度が非常に重要な要素ですので、強度の低下=建材としての機能を果たしづらくなるということです。

木材の劣化する原因は大きく分けて2つに分けられるのですが、

  • 虫の食害(主にシロアリ)
  • 腐朽(腐れ)

の主に2つです。

物理的な破壊を除き、長くて数百年という建材として期待される耐用年数を考えれば、これらの2つの原因以外で木材の強度が低下する事はほとんどありません。

腐朽(腐れ)とは微生物(キノコなどの木材腐朽菌)による劣化です。亜寒帯以北など、シロアリを始めとした木材加害害虫があまり生息しない地域での木材の主要劣化要因は腐朽によるものです。

要は木材も植物(生物)由来のものなので、分解者の働きにより土に還るという構図になっています。

もう一度言います、木材の劣化はシンプルに「腐るか、喰われるか」です。

シロアリは「加害者」なのか?

なお、個人的には建材以外のシロアリの食痕、いわゆる被害ですがは食害と呼んで良いものなのか疑問です。

シロアリはあくまで目の前にある木材を齧り、彼ら自体はセルロースを摂取して分解しているに過ぎません。シロアリからしたらメシ食って何が悪いねんっていう感覚です。

生態系の底辺としてとても重要な役割を担っています。我々が豊かな土壌を利用して農業ができるのもシロアリや菌類など分解者がいるおかげです。

便宜上「蟻害」とか「食害」とか使ってしまってはいますが、自然界の分解者に対して、あれもこれも「食害」や「被害」と言ってしまうのは失礼ではないでしょうかと勝手に思っています。

まあ、便宜上使いやすいので使うのですが。

シロアリの食害と腐朽とを見分けよう!

実は見分けが難しい、蟻害と腐朽

そんな話はさておき、今回こちらのテーマを取り上げたのは、お客様より「これってシロアリの被害でしょうか?」と、劣化した木材や画像等をメールでお見せいただいたりご質問を頂くことが多いからです。

具体的には、

  • 庭木の杭や放置された廃材
  • 穴の開いた玄関框
根本が腐朽した木柵

など。

なぜ質問されることが多いかというと、実はシロアリの食痕か腐朽どうかの判断は、慣れた人でないと難しいのです。

要は腐朽との見分け方ってだけなんですが、言うは易しです。

初めて見た方は、パッと見どちらもボロボロの木材にしか見えないでしょう。

これは腐朽です

腐朽 OR 蟻害 ?

そして厄介なことに(?)腐朽と蟻害は共存している場合も多いですし、蟻害に遭った材がその後腐朽するというパターンもあります。

そしてシロアリが摂食し始めてからどれくらい期間が経過しているかでも難易度は異なりますので、我々専門家でも経験値が浅かったりすると稀に判断を間違うことがあります。もちろん専門家でも経験年数がものを言うのはどんな分野でも一緒ですからね。

とはいえ、ある程度の代表的な見分け方というかパターンがありますので、今回は対象となる劣化部分がシロアリの食痕なのかどうかの判断方法をお伝えしたいと思います。

対象の木材が置かれている周辺の状況も加味して判断すると、精度が上がります。

独自の概念「ターマイトポイント」でシロアリかどうかを判別!

こちらでは、私が考案したシロアリポイントならぬターマイトポイント(TP)というポイントを使い、どれだけシロアリの可能性が高いのかを見ていこうかと思います。

TPが100を超えれば、ほぼシロアリの食痕であると判断してよいでしょう。

TPは、確率何%みたいなイメージで見てもらえればと思います。

※但しボロボロで原型を留めていなくて木材というよりほぼ土に還っているような場合は専門家でも判断できない可能性が高いので、諦めましょう。(判別する意味もあまりないですし)

No.パターンTP
1劣化部や被害部にシロアリがいる100
2晩材だけ残してスカスカ80
3土に接していないのに劣化部中に土がある20
4表面だけ残して中身スカスカ90
5サラサラした顆粒状の糞がある50(100)
6シロアリの巣みたいな構造物がある99

パターン1【劣化部や被害部にシロアリがいる】TP:100

シロアリがいれば確定

シロアリをシロアリだと確実に同定できる方にとっては、当たり前ですがシロアリが存在すれば問答無用でシロアリの被害と断定できますので、純度100%です。

但し目の前の虫がシロアリであると自信持って同定できる方向けの判断方法です。もちろんすべてのシロアリに有効な手段です。 シロアリの同定に自信がない方はこの方法は使えません。似たような色・形をしたトビムシやチャタテムシ等の腐朽の可能性もありますので。 【注意点】 極稀なケースとして、シロアリは存在するが、たまたまハネムーンの時期で有翅虫(羽アリ)が飛んできただけなどという場合もあり得なくはありません。その場合は周囲の状況を見て判断しましょう。職蟻(働きアリ)が発生していればまず間違いないでしょう。

パターン2【晩材だけ残してスカスカ】TP:80

木には春から夏にかけて成長する部分(早材)と夏から秋にかけて成長する部分(晩材)がありますが、早材は柔らかくてシロアリが食べやすく、晩材は固くて食べにくい部分です。シロアリはこの早材部分を好み、晩材だけ残して食べる場合が多いのです。
年輪の色の濃い部分が晩材、薄い部分が早材です。
こういった食痕が見られる場合は、シロアリの可能性が高くなります。
但しこの特徴だけの場合、稀にムネアカオオアリなど木材を加害する一部のアリの仕業の可能性もあります。ちなみに、アリの場合は食しているわけではなくただ穴を開けているだけです。
なお、趣は異なりますが早材、晩材関係なくランダムにボコボコ穴を開けているだけの場合はチビタケナガシンクイ・オオナガシンクイ等の甲虫類の可能性があります。
単独では弱いですが、パターン3との複合条件でほぼシロアリ確定です。

パターン3【土に接していないのに劣化部中に土がある】TP:20

土壌と直接接しているわけでもないのに、劣化部分に土や砂のようなものが付着している場合があります。


この場合、シロアリの可能性がグッと上がりますが、アリの持ち込んだ土である可能性も高い為に単発では判断しにくい要素です。
それに、アリが発生しているからといってシロアリの食害でないと断定する事はでき無いのも難しいところです。
外側にアリ、木材の内側にシロアリが共存している場合もあります。
②との複合条件で、シロアリの可能性は著しく高まります。
シロアリを捕食するためにアリが発生している場合もあります。
但し木材の劣化がほぼなく、木材表面にアリの蟻道だけが付いているような場合は、シロアリの発生はほぼないと思われます。
主にヤマトシロアリ・イエシロアリの場合に有効な手段です。カンザイシロアリは土を利用することが無いので該当しません。

パターン4【表面だけ残して中身スカスカ】TP:90

こちらはかなり特徴的なシロアリ被害です。
前兆もなく玄関框を蹴飛ばしたり躓いたりしたときに、いきなりバキって穴が空いてシロアリさんコンニチワっていうよくあるケースです。
シロアリは空気に触れること、乾燥を嫌う為に木材の表面だけを残して食べ進むというシャイな習性があります。
左記は玄関框の被害ですが、表面だけ残して中身スカスカパターンだとシロアリの可能性がグッと高まります。


「中身スカスカ」案件はカンザイシロアリ・イエシロアリ・ヤマトシロアリに共通で有効です。
ただし、土壌性が強く木部の表面を食い散らかすことの多いネバダオオシロアリなどは微妙で、ベルベットのような食痕の上品な質感は似ていますが、熱心に穿孔するタイプではないので、表面だけ残してっていうのとは趣が違いますね。

パターン5【サラサラした顆粒状の糞がある】TP:50(100)

サラサラして硬い顆粒状の糞が見られる場合、アメリカカンザイシロアリの被害が想定されます。
形だけ見て「カンザイの糞やん!」ってわかる方はTPが100へと昇格します。そんな方あまりいらっしゃらないでしょうが。

アメリカカンザイシロアリの顆粒状の糞


土壌性のヤマトシロアリ・イエシロアリは全く該当しませんので注意してください
糞の硬さや形状を確認し、固く均一な形状、顆粒状であることが確認できれば可能性が高まります。
類似症状に、シバンムシの糞、アリが持ち込んだ砂、ヒラタキクイムシの糞等があります。
よく混同される砂の場合は形が不均一、シバンムシの糞は細長い、ヒラタキクイムシの糞はパウダー状などの点で区別できます。

シバンムシの糞が固まった状態のもの(褐色腐朽も発生)

パターン6【シロアリの巣みたいな構造物がある】TP:99

イエシロアリの巣に代表されるようなシロアリの巣みたいな構造物が木部内に確認されたら、シロアリの可能性が非常に高いです。年季の入ったヤマトシロアリのコロニーでも見られます。

これはイエシロアリ

シロアリの巣みたいな構造物
(というか本物の巣)


こちらはマニアックな判断要素で、イエシロアリ・ヤマトシロアリの場合に有効な判断方法です。特にイエシロアリの構造物に関しては非常に硬く腐敗もしにくい為、コロニー消滅後も長期間にわたってその「シロアリの巣みたいな」形状を保ちます。

ただ、この「シロアリの巣みたいな」っていう感覚で判断できるようなる為には多少の経験が必要です。こちらの構造物、おそらく蟻道のように粘液と土で構成されているものと思われていますが、まだ正確に判明していないという謎多き物体です。
どうやったらこんなに硬くなるんでしょうね。

さいごに

さて、今回の気になる部材のTPは何ポイントだったでしょうか!?

興味のある方は、是非経験を積んで蟻害ソムリエを目指しましょう!

その他もいくつか要素はあるのですが、なにかわかりやすくて良いポイントがあれば、追加で更新していきます。

なお、今回の判断ポイントは「シロアリの被害かどうか」判別するものであって、シロアリの生息を確実に判断するものではありませんのでその点はご注意くださいね。ではまた!

Related

view all