知って安心!シロアリがもたらす「蟻害」の特徴
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Researcher
- 田口 正訓
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研究員 2007年入社
埼玉営業所テクニカルチーム
大学では在来草本植物の研究に携わり、自然環境と生物の相互関係を学ぶ。 2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。 休日も生き物や植物の写真撮影に勤しむ。
interviewはじめに
シロアリ被害と聞くとどんなイメージでしょうか?
木造住宅の場合、知らない間に柱や土台が食べられて耐震性能に影響を及ぼすから、シロアリは怖いという感じでしょうか?
鉄骨住宅の場合は、鉄骨だからシロアリに食べられない。だから心配はないという意見もあるかもしれません。
シロアリ=木材を食べる害虫というイメージは、世間一般に定着していると思いますが、シロアリ被害(以下:蟻害ギガイ)がどういうものなのか?
私が詳しく解説していきます!
蟻害の特徴
蟻害に遭うと木材はどうなるのでしょうか?答えは、年輪を残してボロボロになります。
ここで、木の年輪について少し触れておきましょう。
年輪は樹木の形成層が肥大生長する事で作られます。春に幹が生長し、密度が低い早材が作られます。夏から秋は生長が遅くなり、密度の高い晩材ができます。冬は低温の為、生長が止まります。
この早材と晩材では色が変わるので、1年毎に輪の模様が出来上がり、年輪が形成されます。一年中温暖な熱帯雨林では、年輪がほとんどない事もあります。
晩材は硬く、シロアリはほとんど食べません。一方、早材は柔らかいので、シロアリが好んで食べます。
早材には小さな穴が無数に空いています。密度が低く、柔らかい事がわかります。一方、晩材に小さな穴は見られず、密度が高く、硬い事がわかります。
この状態の木材に力を加えると、バリバリと音をたてて崩れます!
また、食害部分には大抵、土のような付着物があります。これはシロアリが運んできた土です。土が付着している事で、見た目が汚く見えるのも蟻害の特徴です。
この状態が、建物の構造材で発生したと考えたら…、やはり恐ろしいですよね。
木造住宅はもちろん、鉄骨住宅でも、室内の内装材に木材が使われている以上、蟻害と無縁ではないのです。
蟻害と腐朽は紛らわしい?
先日、お客様からこのような質問がありました。
「庭にいらなくなった木材を放置していたら、ボロボロになっていて…。これってシロアリですか?」
お庭に案内され、診断すると、それはシロアリではなく、腐朽(俗に言う腐れ)でした。
腐朽とは腐朽菌が木材を分解する時に発生する現象で、木材の主成分である
- セルロース
- ヘミセルロース
- リグニン
を分解し、栄養にします。
この分解作用によって、木がボロボロになっていくのですが、見た目がシロアリと紛らわしい事もあります。
シロアリも、セルロースを消化器官内の共生菌に分解させ、木材から栄養を摂取しています。
では区別のポイントはどこにあると思いますか?
答えは、木材の中身が詰まっているか、スカスカになっているかどうかです。
腐朽の場合、木材が強度を失っている状態ではあるのですが、基本的には、中身が詰まっています。触れば柔らかく、指先でつまんで力を入れるだけで崩れます。
一方シロアリは、冒頭に申し上げた通り、晩材を残して食害しますので、中身がスカスカになり、触るとバリバリと砕け散るのです!
しかし、この腐朽とシロアリの食害が同時に発生する事もあり、それは、蟻害腐朽(ギガイフキュウ)と呼ばれます。
そのままの名称ですね。
建物において、蟻害腐朽が最も起きやすいのは、在来浴室の土台。
浴室のタイル目地から徐々に水分が浸透し、常に湿気がある状態になり、結果湿気を好むシロアリと、腐朽菌が発生する事になるのです。
浴室以外でも、雨漏れや結露が発生すると、蟻害腐朽が発生する事もあります。
蟻害腐朽が発生した場合、薬剤処理で、進行を食い止める事は可能ですが、元の状態に戻る事は出来ないので、進行が進んでしまった場合は部材を交換する事になります。
床鳴りがする、これってシロアリ?
「自宅の床、ここを踏むと床鳴りがして気になって仕方ないのよ。これってシロアリかしら?」
床鳴り=シロアリが原因?、この問い合わせ内容、結構多いです。床材が蟻害に遭う→床が歪む→床鳴りという考えではないでしょうか。
実際に床鳴りがするという場所を点検すると、目視では異常が見つからない事がほとんどです。
9割以上の確率と言っても良いでしょう。
蟻害から少し話がそれますが、床鳴りの原因は何でしょうか?いくつか原因が考えられるのですが、まず、床材に用いられる木材に原因があります。
木材は、湿度の上下によって体積が変化します。体積が変化すれば、寸法に僅かなずれやひずみが生じ、床鳴りにつながる事があります。また、フローリングと下地の板の間に剝離が生じて、空洞が発生し、そこを踏むと床鳴りがする事もあります。
蟻害によって、床鳴りが引き起こされたケースは、15年勤務して現場を見てきた中で一度もありません!つまり、シロアリと床鳴りは無関係といっても良いと思います。
過去にこんな事例がありました。
それは築40年ほどの建物だったと思いますが新築から一度も白蟻防除工事をした事がなく、和室が空き室になっていて普段誰も立ち入らないとの事でした。
人の気配がしない空き家や空き室はシロアリの格好の住処です。実際にその和室は床材が蟻害でボロボロでした。
畳の上に乗ったところ、畳が上下にたわんだのです!
床が抜けないか、物凄く不安になった事を今でも覚えています。荷重がかかるものがあったら、確実に床が抜けていたと思います。フワフワとした感じ、大袈裟に言えば、トランポリンに乗っている感覚でしょうか?
蟻害に遭った床は鳴るのではなく、たわむのです。
人工物も食べるシロアリ達
最後に木材以外の蟻害について、紹介します。
シロアリ=木材を食べるという事を再三お伝えしましたが、近年、木材以外も蟻害に遭う事例が数多く確認されています。
例えば紙類やダンボール。
紙類やダンボールの蟻害はよく見ます。とはいえそもそもダンボールの原料は紙、紙は木から作られますからこれはある意味納得できます。
庭に古紙やダンボールを放置している場合は注意が必要です。
個人的に最も気になるのは、プラスチックの食害。
断熱材でよく使用されるスタイロフォームはポリスチレン樹脂(プラスチックの一種)なのですが、シロアリが侵入します。発泡スチロールも同様です。
侵入すると、断熱材の中を、枝状に広がっていきます。木材の蟻害と同様に、土を付けていくので、蟻害だという事がわかります。
プラスチックの原料=石油。石油=大昔の植物、藻類が起源。
そう考えると、プラスチックも植物と繋がりがあるといえますが、少々無理やりな気がします。断熱材を食害するのは、今でも疑問に思います。
昆虫は人類と比べて、寿命が短いですが、その分、世代交代が早く、進化のペースが早いです。もしかすると、シロアリも進化して、人工物も食べるように適応したのかもしれません。
以上、シロアリの被害(蟻害)について解説しました。
最後までご覧くださり、ありがとうございました。
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