シロアリの羽アリは隣の家から飛んでくる? どこからでも飛んできます。

  • アメリカカンザイシロアリ
  • 羽アリ

Researcher

研究者プロフィール
橋本 実樹

研究員 2007年入社

DX 推進室 専任課長

埼玉県で初のクマゼミの採集実績あり。大学では昆虫類、主にセミ類の分布調査に携わる。 2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。熱海起雲閣で床下ロボット調査、代々木能舞台や国際子ども図書館の駆除など経験。 趣味はハチや魚類の採集、飼育。

interview

【目次】

1.隣じゃなくてもどこからでも飛んできます

2.羽アリだからと恐れるに足らず!その理由とは?

3.例外編(カンザイシロアリには要注意!)

1.隣じゃなくてもどこからでも飛んできます

いきなり結論を言ってしまいますが、(北海道を除き)日本に住んでいれば羽アリが自宅へ飛んでくることは多々あります。特に珍しくもない現象です。

・・・結構驚きます、よね?

ただ、我々のような専門家とか昆虫好きの方で無い限りはシロアリの羽アリだと認識できる方は少ないので気づく頻度はあまり多くないというのが実情かと思います。

そう、認識してないだけで普通にあることです。

私も幼少期に、最初にシロアリの羽アリを見たときはシロアリだとわかりませんでした。なんか木の根元からワサワサ出てきてキモいなーくらいに思っていました。あとあと実家の庭木がボロボロにされるという現象が起きてシロアリの羽アリだということに気付くのですが。

さて、日本シロアリの代表格であるヤマトシロアリは4下旬~5月、イエシロアリなら6~7月に飛翔する時期となります。それ以外の時期に飛ぶ羽アリっぽい虫はほどんとアリの羽アリだと考えれば良いでしょう。

ただ、コンクリート建物と道路ばかりの都心でも時期になればよくあることなので、隣のお宅がシロアリ被害にあったかどうかってほとんど関係無いです。直接発生現場を目撃しない限りは、どこから発生しているかなんてわからないことが殆どです。なのでもし近所でシロアリ駆除している現場があったからって白い目で見ないでいただきたいのです。

羽アリなんてどこでもいますから。

何度も言いますが、シロアリは土があれば何処にでもいる生き物です。

要は、その羽アリもどこからでも発生する可能性があり、どこからでも飛んでくるということです。

マジ!? 日本ヤバくね?と思ったそこの貴方。

大丈夫です、落ち着いて下さい。

「でもシロアリって家(木部)喰う奴らだよね!?ヤバいじゃん!」

大丈夫です、落ち着いて下さい。羽アリはとてもか弱い生き物です。

日本で羽アリが飛んできて被害を与える確率は0%ではないのですが、ほぼゼロと呼べる位かなり低いです。その理由を解説します。

2.羽アリだからと恐れるに足らず!その理由とは?

まず皆さんにお伝えしたいのは、

・羽アリ自体は殆どの場合、建物に被害を及ぼすものではない

・隣の家にシロアリ被害があった場合も恐れる必要は殆どない

ということです。

なぜかというのは、シロアリの生活史を想像していただくとわかりやすいです。

シロアリは成熟したコロニーが決まった時期になると外部への子孫繁栄の手段として創設女王候補と創設王候補の羽アリを飛ばしますが、飛び立った羽アリがすべてペアリングできて生き延びられる訳では無いのです。

自然界では食べられたり干からびたりペアを見つけられなかったりと、ほとんどが出会う前に死にます。

運良くパートナーを見つけられたペアだけが1%にも満たない確率で生き延びるのです。

「え、それにあたったら喰われるわけでしょう?やっぱりヤバいじゃん!」

大丈夫です。まだ木部は喰いません、というか喰えません。

日本にいるシロアリの殆どがヤマトシロアリとイエシロアリという種類になりますが、これらの種類の創設ペアができたとして、建物に侵入してすぐに木材をボリボリ喰らうようなことは有り得ません。

なぜなら、これら2種は「土壌性シロアリ」だからです。土壌性シロアリとは、コロニーを構築するにあたって土壌を利用することが必須となる種類のことです。

土壌性シロアリの創設ペアは、まず土壌中に安全な場所を確保し、自分の面倒を見てくれる職蟻・兵蟻たちを増やすことが最優先です。安心して繁殖に専念できる環境を自ら構築しなければならないのです。

これらの理由により、早くても数年しないと建物へ蟻道を経由して侵入するような事はないでしょう。

なので、「基本的には」羽アリを恐れる必要は無いですし、そこら中で発生してしまうすべての羽アリを敷地内の土壌から排除することも不可能です。

羽アリの発生に関しては季節の風物詩として「そういうものだ」と思ってしまうのが精神衛生上一番かと思います。

もちろん自宅から羽アリ発生した場合はこの限りではありませんが(こちらはもちろん、早急に対策をしましょう)

ただ、羽アリよりもそこら中にいる「シロアリ」という存在には気を配る必要がありますよね。

そこら中にいるからこそ、我々が生業としているシロアリ予防工事という商品が存在するわけです。

結論:日本にいる殆どの羽アリは恐れるに足らず(例外を除く)

3.例外編(カンザイシロアリには要注意!)

先程まで羽アリが飛んでくることなんて気にしなくて大丈夫!のようなノリでお伝えしてしまっていますが、わずかながらというか、羽アリが飛んできて直接被害を及ぼすようなシロアリも存在します。

それが、外来種のアメリカカンザイシロアリを始めとしたレイビシロアリ科の羽アリの場合です。

本土で確認されているのは「アメリカカンザイシロアリ」「ニシインドカンザイシロアリ」「ダイコクシロアリ」が有名です。特に最も外来種歴が古いと言われるアメリカカンザイシロアリは、国内在来種のシロアリに比べて体が大きいのが特徴です。

アメリカカンザイシロアリは、外来種のシロアリで1970年代より全国各地で局所的ではありますが徐々に分布を広げている種類です。

このシロアリの一番大きな特徴であり例外としてのポイントは、「土壌に依存しない」という生態です(こちらの生態についてはいくつかの私のコラムでも解説していますので詳細はそちらを御覧ください)

国内のシロアリシェアの99%以上を占めるであろうイエシロアリとヤマトシロアリが「土壌性シロアリ」なのに対しこちらは「乾材シロアリ」と呼ばれます。

こちらに関しては、羽アリが飛んできてそのまま木材を直接加害するという、遊牧民的でありさらにタフネスを備えたある意味最強のシロアリです。

フッカル過ぎてコロニーを巨大化できないという弱みもあるんですが、そこはコロニー「数」で勝負のスタンスをとるシロアリです。

アリ類によくある多女王制の種類と似たような貪欲さを感じます。感心している場合じゃないんですけどね。

正直、カンザイシロアリという外来種さえいなければ土壌性云々とかの解説もせずに「羽アリは気にしても無意味です」と一言で終わったわけで。

まあ、定着してしまったものは仕方ないですね。持ち込んだ我々人間の責任でもありますし。

以上、「シロアリは隣の家から飛んでくる?」に付いての解説でした!

ホント、外来種なんて何も良いことない(心の声)

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