白蟻専科

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建築害虫や生態系の分解者として知られるシロアリ。なぜ、シロアリは木を食べるのでしょう？
今回は、その理由について掘り下げていきます。

シロアリは何で木を食べるのか

「セルロース」をエネルギー源として利用できるから！

有名な話ではありますが、シロアリは生態系における分解者として、木材を始めとしたセルロースを主食とし、分解してエネルギー源としています。

なぜ食べるか、そう理由は単純で、木の主成分「セルロース」を分解できるからです。別にセルロースに固執したわけでは無いでしょう。

セルロースは植物を構成する主要な物質であり、木を始め地球上で最も多く存在する有機物です。限りなく無限に存在するセルロースを分解できる事により食料難の心配もなく、シロアリ達は全世界に広まるほどの逞しさを身に着けたわけですね。

無謀にもセルロースのターミネイトを目論む存在、それがターマイトなわけですね。

「セルロース」と食物繊維

セルロースは人間がいうところの「食物繊維」の一種であり化学的には「多糖類」という有機物に区分されます。

我々がエネルギー源として利用するブドウ糖の集合体となっており、分解さえできればエネルギーとしての利用が可能なわけですが、我々人間はセルロースを分解することができません。

余談ですが食物繊維は食品に含まれるセルロースを始めとした、人間が消化できない物質の総称です。
食物繊維がダイエットに良いとよく言われるのは、腸内で嵩張るので満腹感はあるけどエネルギーとしては利用できないので結果的に脂肪になりえないのでダイエットに有効であるという理屈ですね。

食物繊維は腸の蠕動（ぜんどう）運動を活発化させ、腸内の老廃物の除去や整腸作用にも期待ができますので「栄養素」にはならないまでもある意味人体に必要な物質であることは確かです。

シロアリがセルロースを分解できるのはなぜでしょう？

それはセルラーゼと呼ばれる酵素の働きによるものです。

シロアリは自らや腸内の共生原虫（鞭毛虫など）や細菌が生成するセルラーゼと呼ばれる酵素を持つので、直接エネルギーとして利用できる糖類であるオリゴ糖へ分解することができるのです。
（オリゴ糖は＝ブドウ糖の集合体）

セルロースの分解を共生原虫に依存する種・しない種

高等シロアリは格が違う？

前述のようにセルロースに依存した存在であるシロアリですが、分類上のグループによって共生生物（鞭毛虫や細菌）への依存度が異なっています。

セルロースの分解に関して全く共生生物に頼らず自力でセルラーゼを産生する種から、大部分を共生生物由来のセルラーゼに頼っている種まで様々です。

セルラーゼ産生方法の違いで分類すると以下の２グループに分かれます。

①自ら生成した酵素のみ使用するグループ（高等シロアリ）
②自らの酵素の他に共生生物による酵素を利用して生命活動が成立するグループ（下等シロアリ）

高等シロアリだけに、セルラーゼ産生能力に関しても別格なのでしょう。
どのようなやり方でセルラーゼを生成するにせよ、結果的にどのシロアリもセルロースを分解することにより生命を維持しているということは共通していますので、シロアリは完全にセルロースに依存しそれを分解するために存在している生物と言えます。

セルロースの最終分解形態であるブドウ糖だけ与えて飼育してみたらどうなるんだろうかと、興味がわいたのはここだけの話です。

なお、②のグループはセルラーゼ以外に消化に関わる生理的機能も共生生物に依存しており、共生生物が滅するとともにシロアリ自体も死んでしまうそうです。まさに運命共同体ということです。

共通の祖先を持つ「ゴキブリ」にも共通した生態？

シロアリは分類上ゴキブリの親戚ですが、その証拠？ではないですが一部にはシロアリ同様に木を主食とする種類がいます。
※木を主食とする昆虫を食材性昆虫といい、シロアリ以外にはゴキブリ類の一部やカミキリムシ類などが該当します。

日本だと九州以南に生息するクチキゴキブリ科が該当し、この科は下等シロアリ類と同じく共生原虫によるセルロース分解機能を擁しています。

もともとシロアリとゴキブリが共通の祖先のときに共生する鞭毛虫を獲得し、その後それぞれに分化した結果だそうで、こちらも興味深いですね。

以上、ちょっと最後は脱線しましたが、「シロアリは何で木を栄養にできるの？」というテーマでお送りしました。