シロアリの腸内に広がるミクロな世界
- 生態
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Researcher
![研究者プロフィール](https://shiroari-senka.com/shiroari-senka/wp-content/themes/shiroarisenka/common/img/single/researcher04.png)
- 七海 里枝
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研究員 2008年入社
管理課
大学では木材害虫および森林昆虫を専攻し、菌食性昆虫の生態研究を行う。 2008年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 シロアリをテーマとした漫画を執筆し、(公社)日本しろあり対策協会の展示会に出展協力など、異色の経歴を持つ。
interview以前からヨーグルトをよく食べたり飲んだりしているのですが、最近は「乳酸菌の○○株が配合」とパッケージに明記してある商品が増えたように感じます。乳酸菌は人間の腸内で悪玉菌の増殖をおさえるなど、何かと人間にとって良いはたらきをしているのは広く知られているかと思いますが、実はシロアリの腸内にも微生物が存在していて、シロアリが生きる上で大きな助けになっています。そんなわけで今回はシロアリの腸内微生物のお話です。
腸内微生物のはたらき
シロアリの種類は高等シロアリと下等シロアリに大きく二分できますが、ヤマトシロアリなど下等シロアリの腸内には高等シロアリに比べてずっと多様な種類の微生物が存在しています。たとえばヤマトシロアリの腸内には13種類程度の原生生物に加えて多数の細菌類が存在し、その形や大きさは様々です。
これらの腸内微生物は、シロアリが食べた木材(セルロース)をシロアリがエネルギーとして利用できるかたち(酢酸)まで分解する役目を果たしています。下等シロアリに分類されるシロアリたちはこの微生物に依存している部分がとても大きく、たとえば微生物を失ったヤマトシロアリは、食べた木材からエネルギーを得ることができずに死んでしまいます。一方で微生物サイドもシロアリの体外では生きられず、相利共生関係を築いているといえます。
遠く離れていても腸内微生物の種類は同じ
生まれたばかりのシロアリはもちろん微生物を持っていませんから、生活するなかで親や兄弟から分け与えられることで獲得します。同じヤマトシロアリであれば生息地域が離れていたとしても、微生物の種類は変わりません。九州に生息するヤマトシロアリも東北に生息するヤマトシロアリも同じ種類の微生物と共生しています。
遠く離れた場所にそれぞれ生息しているシロアリも、元をたどるとどこかでつながっていることが、共生している微生物の種類でわかるのが興味深いですね。
また、シロアリの腸内微生物の中にはセルロースを分解するものだけでなく、窒素固定菌も存在しています。窒素固定菌とは、空気中の窒素を生物が利用可能な窒素化合物に変換する菌類で、マメ科植物の根粒菌などが有名です。シロアリ(特に下等シロアリ)はそうした腸内の生き物の力を借りて、自然界の中でエネルギー源にすることが困難な木材から効率よくエネルギーを得ることに成功しているわけです。あの小さな体の中で、これほど効率の良いエネルギー変換が行われていると思うと感心します。
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