シロアリの「外来種」を語る!

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アメリカカンザイシロアリ

Researcher

研究者プロフィール
橋本 実樹

研究員 2007年入社

DX 推進室 専任課長

埼玉県で初のクマゼミの採集実績あり。大学では昆虫類、主にセミ類の分布調査に携わる。 2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。熱海起雲閣で床下ロボット調査、代々木能舞台や国際子ども図書館の駆除など経験。 趣味はハチや魚類の採集、飼育。

interview

外来種とは

外来種と外来生物

白蟻専科の橋本です。

外来種の話をするにあたり、まず「外来種」と「外来生物」という似たような2つの言葉が存在するのをご存知ですか?
専門家でなければ、そもそもこの違いを意識することはほとんどないでしょうし、正直意識する意味もないです(笑)

外来生物法では

外来種(がいらいしゅ):国内外来種を含む(=国外からの移入種とは限らない)
外来生物(がいらいせいぶつ):国外外来種を指す

という違いがあります。

単に「外来種」は国内外不問の移入種という意味で使用しますので国外からの使者とは限らないわけです。

なお、今回紹介するシロアリの中でいくと
イエシロアリ:国内外来種 かつ 外来生物の可能性あり
イエシロアリ以外:外来生物

という分け方ができます。とても紛らわしいですね。

外来種の例

簡単に、外来種の例について解説します。

国内の淡水魚の例でいくと琵琶湖産アユ放流における副産物で東北・九州地方に分布するタモロコ(関東以西の本州と四国が原産地や関東地方に分布するカワムツ(本州中部地方以西原産)のように、国内の別の地域からの持ち込みなどは国内「外来種」ではありますが、「外来生物」ではないということですね。

人間の都合で勝手にラベリングされる方はたまったものではありませんよね。

イエシロアリにおいては、日本国内においての「外来生物」かは正直定かではありませんが、今まで存在していなかった東京都や茨城県などで人為的に持ち込まれたイエシロアリが繁殖してしまった場合は「国内外来種」となり得るわけですね。

基本的には国内には本来生息していなかった種が国外から人為的に持ち込まれ、繁殖し定着するようになった種だと思えばよいでしょう。

ただし、すべてが人為的な持ち込みとは限りません。

もちろん渡り鳥のにくっついて移動する等による分布拡大などもあるでしょうし人間が認知する以前に定着していたフロムアブローダーな種達は、クロゴキブリみたいに明らかな歴史的証拠がない限りはそもそも外来生物や外来種とは扱われないのがややこしいところです(クロゴキも諸説あるようですが)。後述するイエシロアリも似たような印象を受けます。

一般的に有名な外来生物としては、アライグマ、アムールハリネズミ、ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)、アメリカザリガニ、ウシガエル、ブラックバス(オオクチバス、コクチバス)、ブルーギル等が挙げられます。

なお、これらの種は、外来生物の中でもランクの高い「特定外来生物」と法律で定められて飼育・保管などはもちろん、採取して生きたまま移動しただけでも「外来生物法」により刑罰が下されます。

特定外来生物一覧(外部サイト)

現状子どもたちのペットとしてポピュラーすぎるアメザリやアカミミガメは小規模飲食店の喫煙対応のような柔軟な対応になるみたいですが、アライグマ、アムールハリネズミ、ウシガエル、ブラックバス、ブルーギルなんかは特定外来ガチ勢です。遊び半分で生きたまま持ち出したり放流などしてはいけません。

もちろん、持ち込んだ人間のせいなので外来生物自体には罪はないのですが、それほど外来生物の問題って深刻なのです。

外来生物がどう問題になるのか、については在来種の絶滅や遺伝子汚染など、世の中に沢山情報が出ていると思いますので、ここでは触れずに今回は、主にシロアリ界隈における「外来種」4種について紹介する記事となります。

なお、シロアリについては草食(?)で他の生物を直接的に駆逐するようなケースはあまり報告がなく、生態系への影響などは具体的にわかっていないことが多いです。

シロアリの代表的な外来種

以下の4種の外来種について解説していきます。

アメリカカンザイシロアリ ~「元祖」外来~
ニシインドカンザイシロアリ ~カリブの大黒~
ネバダオオシロアリ ~とにかくデカい~
イエシロアリ ~シロアリJAPAN代表~

アメリカカンザイシロアリ ~「元祖」外来~

アメリカカンザイシロアリのニンフ(真ん中上)と擬職蟻(それ以外)

シロアリ外来種の大御所であり元祖といえばそう、アメリカカンザイシロアリ!

北米原産のシロアリで、レイビシロアリ科に属します。レイビシロアリ科は英語ではDrywood Termitesと呼ばれ、いわゆる「乾材シロアリ」とよばれるシロアリの一種です。

この科の生態は大体一緒というか、乾材シロアリの仲間は大体似たような生態です(雑)

私が勝手にシロアリ界のべドゥィンと名付けたグループに相当します。現在カンザイシロアリ類の中では日本で最も家屋への被害を引き起こし問題となっている種類でもあります。個人的には特定外来生物にしてほしいくらいです。

1970年代にはじめて東京の江戸川区で発見されたのが最初で、輸入家具や輸入材と一緒に移入されたものと思われています。

現在では海岸部の市街地を中心に全国各地に分布していると言っても過言ではありません。海岸部に分布が集中しているのは地域柄、輸入木材等に触れる機会が多いからでしょう。

有翅虫の飛翔能力は高くないため、自力で生息域を広げるスピードは緩やかです。全国各地で分布しているので、人為的な木材の持ち込みが原因です。

我々専門家が「外来種」と聞いてすぐに思い浮かぶのがこのアメリカカンザイシロアリです。

現在被害が確認されている地域(都道府県)は以下のとおりです。

東京、神奈川、埼玉、千葉、東北地方、北陸地方、大阪、京都、和歌山、中国地方、愛媛、高知、福岡、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄

となります。あと50年もすれば日本のどこでも見られるような種類になってしまうかもしれませんね。。。

ちなみに、東京都は全国有数の被害多発地域が複数存在することもあり、数は多くありませんが、我々も関東一帯で数百件の駆除を手掛けていますし日々効果的な駆除方法についての検証を続けています。

逃げるとヤバいので飼育には向きません。興味半分での飼育は絶対にやめましょう。

ニシインドカンザイシロアリ ~カリブの大黒~

よく見ると頭部がザラついた雰囲気の「ニシインドカンザイシロアリ」の兵蟻(白っぽいのは木粉)

カリブ海諸国で最初に確認されたレイビシロアリ科ダイコクシロアリ属のシロアリです。

日本の沖縄などに生息する在来種のダイコクシロアリと頭の形状が一部違うくらいで、とてもよく似ています。あくまで「ダイコク」の仲間であり、海賊ではありません。

兵蟻の頭部が特徴的でパッと見ダイコクシロアリにそっくりですが、表面がボコボコしており「頭のザラついたダイコクシロアリ」と認識しておけばよいでしょう。

私が直接関わったのは東京都内の1件のみですが、輸入家具のベッドについて持ち込まれ、ベッドの足からフローリングへ穴を開けて侵入していたという事例でした。他にも複数案件を弊社で対応しており定着している地域も確認されていますが、こちらもアメリカカンザイシロアリと比べるとかなりレアな種類にはなります。

温暖な環境を好むので比較的日本での繁殖には向かないのかもしれませんが、近年僅かではありますが生息を広げているようです。

アメリカカンザイシロアリと生態が似ていることからも分かる通り、こちらも逃げるとヤバいので飼育には向きません。興味半分での飼育は絶対にやめましょう。

ネバダオオシロアリ ~とにかくデカい~

ネバダオオシロアリ(擬職蟻・兵蟻・有翅虫)

兵庫県の一部地域の森林に生息が確認されているレアなアメリカンシロアリです。大型なのが特徴で、兵蟻とか2センチ位にあります。表現するなら、まるで「逆ハサミムシ」

「逆ハサミムシ」との異名のあるネバダオオシロアリの兵蟻(上)・有翅虫

日本国内での生息域がかなり限られているせいもあり、家屋での被害報告事例はありませんが木材を主食とするので条件によっては家屋への被害が発生する可能性があります。

まあ、目の前に木があったらそれを喰らうのが我らシロアリですから、可能性としてはあるでしょうね。

かなり大型で、食用にするにはもってこいのサイズですし、逃げても繁殖するリスクが低いので飼育観賞用にぴったりです。

大きくて観察しやすく、兵蟻もカッコイイので言うことなしです。

よって、非常に愛好家向けのシロアリと言えるでしょう。

ただし、特定外来生物には該当しませんが外来種の放虫はダメ。ゼッタイ。

イエシロアリ ~シロアリJAPAN代表~

攻撃力の高いイエシロアリの兵蟻

ヤマトシロアリと並んでシロアリJAPANの二大巨頭であるイエシロアリ。建物に及ぼす被害は世界でも最大級です。兵蟻の気合も攻撃力もヤマトシロアリとは比べ物になりません。

西日本・九州・沖縄地方ではヤマトシロアリなんているの?ってくらいシロアリ被害といえばイエシロアリというイメージです。(もちろんヤマトシロアリの被害も沢山ありますよ)

どのくらいレベチかといいますと、ヤマトシロアリは雨漏りとかない限りは2階までガッツリ被害を及ぼすことがほとんどありませんが、イエシロアリは活動の生命線である水を運ぶ能力に長けているので、外壁だろうが小屋裏だろうがお構いなしに巣作り及び侵食可能です。自己紹介欄の特技欄に「バケツリレー」と書いてあることが容易に想像できます。

どちらかというと国内で外来種として問題になるというよりは、日本や中国・台湾などのアジア圏からアメリカなどの欧米に拡がって建材被害で問題になっているというパターンが多いです。

実はなんと、こちらも在来種(日本固有のシロアリ)ではなく、中国大陸からやってきた外来種だと言われています。

論文にもよるのではっきりしない部分も多いみたいです。

さて、以上が、日本におけるシロアリの代表的な「外来種」となります。

そもそも人類が情報網を持つ以前の持ち込みについては定かではありませんので、我々が認知していない「外来種」もおそらく多分にあるのでしょう

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