ニシインドカンザイシロアリ【Cryptotermes brevis】とはどんなシロアリ?

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Researcher

研究者プロフィール
木村 健人

研究員 2009年入社

経営企画部webマーケティング課専任課長

シロアリ・木材腐朽菌に対する防蟻・防腐薬剤性能評価、木材保存について在学中に携わる。 2009年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。趣味はシロアリ飼育。

interview

家屋に被害をもたらす世界的家屋害虫のシロアリ、Cryptotermes brevisが日本でも見つかっていることをご存知ですか?

カリブ海地域に由来する熱帯性の外来種シロアリで、日本でも大きな被害となる恐れがあります。この記事では、Cryptotermes brevis(ニシインドカンザイシロアリ)の生態や日本での発見事例、対策等について解説します。

ニシインドカンザイシロアリとは

ニシインドカンザイシロアリはレイビシロアリ科のシロアリで、カリブ海の西インド諸島で1853年に初めて発見された外来種です。

水の供給がない木の中に住むことができる乾材シロアリの一種のため、木材から別の木材へ侵入することができます。そのため、家具や住宅の木材に被害を与える家屋害虫として世界的に問題となっています。

日本には同属のダイコクシロアリが沖縄地域に分布しており、生態や形態も非常に似ています。同地域に侵入されると定着するリスクがあるシロアリです。

世界の分布域

名前のとおり西インド諸島に分布するニシインドカンザイシロアリですが、原産地は西インド諸島ではありません。

もともとペルーやチリの沿岸砂漠に生息していたものが、木造船や家具などから人為的に運ばれてジャマイカやキューバなどに拡がったと言われています。

現在では、南アメリカ(沿岸部)、西インド諸島全域、中央アメリカ、アメリカ南東部、アフリカ熱帯地域など、熱帯から亜熱帯の地域に分布します。温帯域でも南アフリカやオーストラリア北東部など最低気温が8〜10度を下回らない地域では定着しているようです。

日本の分布域

日本では東京都や岡山県、神奈川県で輸入家具などから発見された事例がありますが、気候的に本州に定着する可能性は低いと考えることができます。

しかしながら、ニシインドカンザイシロアリの性質上、家具など乾燥した木材中で生きる事ができるため、一年中10℃を下回らない室内では生き延びる恐れがあり、今後の被害の拡大には注意が必要です。

また、南西諸島や小笠原諸島など亜熱帯地域では、侵入されると定着する可能性が高く、注意すべき種類と言えそうですね。

生態

他の乾材シロアリと同じく、コロニーは女王、王、擬職蟻、兵蟻で構成されます。女王と王は基本的に1ペアで、巣内のほとんどが擬職蟻です。形が特徴的な兵蟻は3年ほど経過すると出現すると言われています。

巣が成熟すると1コロニーあたり1000を超える集団となり、5年ほどで羽アリを発生させて新しい場所へと分布域の拡大をおこないます。

私が管理しているコロニーでは、2年経過で10数頭の規模なので、初期巣の成長は比較的穏やかな可能性がありそうです。

学名Cryptotermes brevis
和名ニシインドカンザイシロアリ
大きさ女王・王:6mm前後
働きアリ:5mm前後
兵アリ:5mm前後
女王・王:茶褐色
働きアリ:淡黄色
兵アリ:暗褐色・淡黄色

木材の加害習性と発見ポイント

木材に巣を作る乾材シロアリの一種ですので、日本に定着して問題となっているアメリカカンザイシロアリと同じ様な形跡を残します。

まず、女王と王のペアは、木材の木口面に穴を開けて内部に侵入します。木材は基本的に乾燥した木材が中心で、侵入した木材の中に巣を作り、巣を拡げながら木材を食い進んでいくのです。

木材を食い進む職蟻

ただ、食害が進行しても木材表面を残して内側だけ食べ進めていきます。ニシインドカンザイシロアリは基本的に木材の外には出てこない臆病な性格をしているのです。では何故そんな事をするのかと言うと、内部の空洞化した穴が自分たちの生活空間を兼ねているためで、外敵が巣内に侵入するのを防止する重要な役目を担っています。

しかし、外界と生活空間を完全に遮断してしまうと、巣内には自分たちが出した糞が溜まり続けてしまう、よろしくないデメリットが出てきます。

巣内に溜まった糞

そこで乾材シロアリたちは、糞を外に排出するときは1mm程度の糞孔(キックアウトホール)を木材表面に開け、そこからウンチを外に蹴り落とす技を持っているのです。

糞粒はそこから数千、数万といった単位で働きアリたちがせっせと排出し、巣内は清潔さが維持されます。

木材の外に排出された糞

しかし、私たち人間にとって糞粒の排出は非常に分かりやすい目印です。住宅内の柱や家具が被害を受けると、糞孔の真下に糞が円錐状に堆積します。

ニシインドカンザイシロアリの糞は砂粒状で固く、1mm未満の大きさです。これは他の乾材シロアリと同様の特徴ですが、木材がシロアリ被害を受けている重要な手がかりとなります。

不要となった穴は埋め戻される

巣内の糞を排出し終えた穴は、そのまま放置されるのではなく自分たちで蓋を作り密閉してしまいます。穴は開けたくないけど、糞は外に出したい・・・。乾材シロアリたちが葛藤する姿が伺えますね。

日本での発見事例

弊社でニシインドカンザイシロアリの駆除を担当した事例の一つが、輸入ベッドでの被害事例です。

海外から輸入したベッドにもともとニシインドカンザイシロアリが住み着いており、そこから糞の排出、床への移動が見られました。被害のほとんどがベッドの木材でしたので、ベッドの処分と一部の薬剤処理で駆除は完了となりました。

このように、日本でも輸入家具からの侵入が稀に見られますので、輸入家具が好きな方、特にハワイや中南米など暖かい地域の家具が好きな方は十分に注意してほしいなと思います。

針葉樹、広葉樹のどちらの木材も好んで食害するシロアリで、家具に使用される合板などにも被害が及びます。基本的に、木質材料であれば何でも食べてしまうと思っていただければ間違いありません。

駆除方法

ニシインドカンザイシロアリの駆除は、アメリカカンザイシロアリの駆除方法と同じで、被害材への薬剤注入処理が基本となります。家具が原因と分かっている場合は、燻蒸処理や焼却処分などの方法でも問題ありません。ただし、アメリカカンザイシロアリよりも小型のためより狭い空間に入り込む可能性があり、駆除の難易度はニシインドカンザイシロアリの方が高くなります。

また、南アメリカ沿岸部原産のシロアリですから、低温に弱い特徴を活かして冬場に5℃以下の部屋や室外で一定期間放置する方法でも駆除が可能と考えられます。(※推測です)

まとめ

ニシインドカンザイシロアリは日本でも侵入の報告が複数寄せられています。屋外に定着する可能性はありませんが、輸入家具を通じて住宅内部で繁殖する可能性があるシロアリですので、輸入家具を扱う方や購入を検討している方は、十分に注意していただければと思います。

世界的に大きな被害をもたらす大害虫ですので、私たちも今後の動向に注視していきます。

参考文献等

Featured Creatures West Indian drywood termite(https://entnemdept.ufl.edu/creatures/URBAN/TERMITES/Cryptotermes_brevis_west_indian_drywood_termite.HTM#top)

Scheffrahn RH, Křeček J, Ripa R, Luppichini P. 2009. Endemic origin and vast anthropogenic dispersal of the West Indian drywood termite. Biological invasions, 11: 787-799 https://doi.org/10.1007/s10530-008-9293-3

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