難易度は折り紙付き!シロアリ飼育の難しさを語る

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Researcher

研究者プロフィール
田中 勇史

研究室長 2007年入社

シロアリ業務技術開発課専任課長

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。 大学の海外調査にも協力。

interview

こんにちは。田中です。

今回は、シロアリを飼育するうえでの悩みどころについてお話しようかと思います。

「シロアリなんて飼うつもりありませんよ!」と言われてしまいそうですが、とても奥が深くて面白いので少しの時間お付き合いいただけると嬉しいです。

シロアリの飼育は簡単?とんでもない

まず結論として断言できます。シロアリ飼育の難易度はものすごく高い。(長期飼育の話では、そもそも野生から採取する時点での問題がからんでいるというお話をしましたが、今回は純粋に飼育における管理の難しさについてお話しをしていきます)

私はこれまで、仕事でもプライベートでも魚、猫、昆虫・・・など、一通りの生き物を飼ってきた経験がありますが、やはりシロアリの飼育はトップレベルに難しいです。

その理由について、代表的なものをいくつか紹介していきたいと思います。

湿度問題

「湿度管理なんて霧吹きでシュッとしておけば大丈夫でしょ?」と思うかもしれません。しかしシロアリはとっても弱い生き物、霧吹きの仕方1つ誤っただけで水没死します。

一応湿度の目安は60%ほどなのですが、湿度を意識しすぎると壁に付着した水滴がトラップになって次の日大量死しているなんてことも。また、湿度を上げるとケース内温度と外気温との差による結露が発生しやすくなります。

通気を好まないシロアリは、基本的にはなるべく密閉性のある容器で飼育します。しかしそのことから他の生き物を飼育する時よりもずっと結露が発生しやすいです。

蓋を少し開口して内部の温度差をなくしてあげることで結露は収まるものの、あまり強くやりすぎると今度はシロアリ自体に悪影響を及ぼすので加減が難しいところです。

カビ問題

それと付随して、セットみたいにくっついてくるのがカビ問題です。カビを生やさず、湿度を高めてあげる必要があります。

手っ取り早い対策はこまめな換気です。通気を適度に保ってあげることで、内部の湿度が停滞するのを防ぎ、カビが発生しにくくはなります。

ですが、先ほどもお伝えした通り、シロアリは通気が良いものを嫌います。

ちょっとツンデレみたいな性格をしていますよね。ああ見えて結構気難しい性格なんですよ。機嫌を損ねないよう、そこはシロアリと相談しながら行うようにしましょうね。

ちなみにカビが発生する状況というのは「シロアリの活性」が落ちている証拠でもあります。

本来シロアリは、自ら細菌やカビが巣内に蔓延しないように抗菌処理を施す能力を持っています。

そのため、活性が高く元気な状態を保てているコロニーを飼育していると、中にカビ類が発生することはほぼありません。

もしカビなどが発生し始めたら、それはケース内の状況が悪化してシロアリの元気がなくなってきている危険信号なのです。

ケースを新しくしたり、掃除をしてあげる必要がありますので覚えておきましょう。

ガス発生問題

もう一つ、コロニーに対して深刻なダメージを与えるのが「ガス発生」です。

聞きなれない単語ですが、シロアリをケースに投入した日~次の日辺りにかけて頻発する現象です。覚えておくといいですね。

シロアリを飼育するにあたって、大抵は生息していた朽ち木をそのまま使うことはありません。

他の生き物の混入や菌類の混入などの危険性が高まるからです。

そこで一旦朽ち木からシロアリを取り出してケースに投入するわけですが、そのためには「ドサッと」一気に投入する必要があります。

その時、投入されたシロアリの数%は必ずと言ってよいほど圧死します。

これをそのまま放置してしまうと、死んだ個体からガスが発生してくるのです。

先ほど、通気があまりない容器で飼育することが多いと言いましたが、こういった容器であるがゆえにガスが抜けず、充満してしまうことで次の日全滅・・・なんてこともあるんですよ。

放置は禁物、手間はかかりますが死亡した個体は必ず取り除くようにしましょう。

蟻道問題

シロアリが地上を移動する際に用いるトンネル状の道、それが蟻道です。蟻道はシロアリが餌となる杭や廃材、建物に侵入する時などによく使われます。

飼育していると、シロアリは餌を探して徘徊するのですがケースサイズには限りがあるので端までくると上に登ろうとします。その際、蟻道を壁に構築するのですが、これまた放置は禁物です。

なぜかって?そりゃあ、逃げられるからですよ。

そのまま、「あぁ、蟻道伸ばしてるな」って思っていると隙間から脱走されたり、よく飼育容器として使われるタッパーなどでは、蓋が齧られて穴が開き、逃げられるパターンがあるので要注意です。

頻繁に餌となる木やキムタオルなどを入れてあげれば、多少は落ち着きますけど、完全には防げないので見つけたら崩すという作業をしてあげると良いですね。

まとめ

どうでしたか?シロアリを飼育するって簡単に思うかも知れませんが、実はかなりの手間がかかるものなのです。こういった、シロアリを飼育している飼育記録というものは案外少ないので、今後も随時発信していきたいと思います。それでは、また。

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