茶色い砂粒はシロアリなど虫のフンかも
- アメリカカンザイシロアリ
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Researcher
- 木村 健人
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研究員 2009年入社
経営企画部webマーケティング課専任課長
シロアリ・木材腐朽菌に対する防蟻・防腐薬剤性能評価、木材保存について在学中に携わる。 2009年テオリアハウスクリニックに新卒入社。 数千件のシロアリ調査および駆除工事に従事。趣味はシロアリ飼育。
interview「茶色くて砂粒状のフンのようなものが部屋に落ちています」
「木くずみたいな硬い粒が溜まっているけど、何だろう?」
このようなお問い合わせで私が現場に伺うと、アメリカカンザイシロアリというシロアリのフンであることがとても多いです。
ですが、多くの方はこの”つぶつぶ”がシロアリのフンだとは考えもつかないようで、「自宅にシロアリが住み着いていたなんて・・」とショックを受ける方が多くいらっしゃいます。
そこで今回は、アメリカカンザイシロアリに代表される乾材シロアリが排出する茶色い砂粒状のフンについて、その特徴や対策方法について解説し、他の原因についても掘り下げていきます!
アメリカカンザイシロアリの茶色いフンはこれ!
アメリカカンザイシロアリのフンの特徴は、大きさが0.7mmから0.9mmほどで肌色から茶色をしています。そしてクルミの殻のような硬さが最大の特徴で、指で押しても潰れませんし、爪でつまんでも潰れることはありません。
似たような昆虫のフンはここまで硬いものはほぼ無いので、硬い!と感じればこの乾材シロアリの仲間でほぼ間違いありません。
色 | ベージュ〜茶色 |
大きさ | 0.7〜0.9mm |
かたち | 俵状で縦に筋が入る |
硬さ | とても硬い |
フンの色がカラフル?
実は乾材シロアリ、フンの色が様々で、白、ベージュ、黄色、赤茶色、こげ茶色などの色があります。
なぜ色が変化するのか解明されていない部分も多いですが、私個人の飼育観察経験からすると、木材の色(材質)がある程度フンに反映されていると感じています。
ただ、フンの色が違うからと言ってシロアリの種類が違ったり被害の具合が違ったりする訳ではありません。なので、色の違いは基本的に気にする必要はないですね。
ちなみに、黄色など発色のあるフンは、宝石のように透き通っていてとてもキレイなんです。ただ、不透明なフンと多少異なる形状をしているので、成分の違いなどは気になるところです。
フンが見られる場所
フンは木材が使われる場所の周辺であればどこでも見られます。例えば窓枠やドア枠が木製だと、その周囲にフンが散らばっていることもありますし、天井からだとエアコンの天面やカーテンレールにフンが落ちていることもあります。
よく見られる場所
- 窓枠・ドア枠
- 外壁の下
- 柱の周辺
- 長押(なげし)の隙間
木材が無くても、部屋の壁に穴があいてそこからフンが出てくることもあります。これは壁の中にある木材に乾材シロアリが巣を作っていて、フンを出すために壁に穴を開けているんですね。
フンの密集度でおおよその被害箇所がわかる
フンは糞孔(ふんこう)と呼ばれる排出口から排出されます。英語ではキックアウトホールと呼ばれているので、直訳すると「フンを蹴り出す穴」、まさにそのまんまですね。
その排出口からフンの落下地点までの距離が近ければ、フンは密集します。逆に落下地点まで遠ければ、フンは一箇所に密集せず散らばった状態で見つかります。
つまり、排出されたフンの密集状態からおおよその被害エリアを予測できるのです。糞孔が見つからない場合、糞の密集状態から被害箇所を想定するので、もしフンを見つけても掃除はせずにその状態のまま観察することが大切なのです。
フンを触っても大丈夫?捨てていい?
アメリカカンザイシロアリと疑われるフンを我が家で見つけた場合、そのフンの対処に困ってしまいますよね。
フンは触っても無害なので、気にならなければ素手で触っても問題ありません。燃えるごみとして処分することもできます。
害はある? | 触っても害はありません |
ゴミとして捨てられる? | 燃えるごみとして処分できます |
すぐに処分したほうがいい? | 専門業者に調査を依頼するまでその状態のままで! |
ただし、先程も解説したとおり、フンは被害箇所を見つけるための大きな手がかりとなります。フンを処分してしまうことは手がかりを消してしまうことになるため、専門業者に調査をしてもらうまではその状態のままにしておきましょう。
乾材シロアリのフンに似ているフン
小粒で茶色いフンは、住宅に出没する他の昆虫にもいくつかあります。
ゴキブリ | 大きさは1mmから2mmほど 茶色から黒色 形は不均一でゴミのよう |
シバンムシ | 大きさは1mm以下 色は茶色形は両端が尖る |
ヒラタキクイムシ | 粉状木くずに見える |
乾材シロアリ | 大きさは1mm以下 色はベージュから茶色 形は俵状で縦筋が入る |
ゴキブリはご存知のとおり衛生害虫です。シバンムシとヒラタキクイムシは、家屋の木材を食べる家屋害虫ですので、アメリカカンザイシロアリでなくても安堵するのは禁物です。
もしも、シバンムシやヒラタキクイムシのフンと思われる粒を木材周辺で見つけた場合は、害虫駆除の業者に調査を依頼するようにしましょう。
アメリカカンザイシロアリとその仲間の特徴
では、このアメリカカンザイシロアリをはじめとする乾材シロアリはどういったシロアリなのでしょうか。
「すぐに対処する必要があるの?」
「なんで我が家に出てしまったの?原因は?」
そのような疑問を解決していきましょう!
アメリカカンザイシロアリなどの乾材シロアリとは?
名前の通り、カンザイ=乾材のこと、つまり乾燥した木材を食べるシロアリのことを総称して乾材シロアリと呼んでいます。専門的には、レイビシロアリ科のシロアリのことです。
アメリカカンザイシロアリは、乾材シロアリの中の一種なんですね。実は日本にはアメリカカンザイシロアリ以外にもシュワルツカンザイシロアリ、ハワイシロアリ、ダイコクシロアリ、ニシインドカンザイシロアリ、スギオシロアリ、サツマシロアリ、カタンシロアリ、ナカジマシロアリの生息または被害が確認されています。
関東で被害が確認されたことがあるのは、アメリカカンザイシロアリとニシインドカンザイシロアリですので、この2種について詳しく見てみましょう。
アメリカカンザイシロアリ | ニシインドカンザイシロアリ | |
学名 | Incisitermes minor | Cryptotermes brevis |
フンの形状 | 俵状で縦筋がある大きさは0.7mm〜0.9mm | 俵状で縦筋がある大きさは0.5mm〜0.8mm |
羽アリの発生 | 6月〜7月ごろの日中 | 4月〜6月ごろの夜間 |
家屋への被害 | 加害する | 加害する |
働きアリの大きさ | 5~8mm | 4mm前後 |
基本的に2種とも建物に侵入、定着して家の木材を食い荒らす害虫です。日本では被害事例のほとんどがアメリカカンザイシロアリによる被害で、ニシインドカンザイシロアリの被害事例は多くありません。
ちなみに、この2種のフンを比較したのが上の写真です。
左がニシインドカンザイシロアリ、右がアメリカカンザイシロアリ。アメリカカンザイシロアリのほうが大きいですが、どちらも非常に小さな粒ですので、肉眼で見分けるのは至難の技ですね。
基本的にどちらも生態や被害の傾向は同じですので、乾材シロアリのフンかどうかが見分けられれば十分です。
アメリカカンザイシロアリが侵入した理由
外来種であるアメリカカンザイシロアリは、現在日本全国に生息域を拡げつつあり、被害発生地域では地域全体に生息が拡大している場所も少なからずあります。
ここまで生息が拡がったのには、アメリカカンザイシロアリが乾燥に非常に強いことが大きく関係します。
乾燥に強いということは、材木やモノの中に巣を作った状態で運ばれても中で生き延びられることを意味し、家具や荷造材に住み着いていたシロアリが、日本に運ばれて生息域を拡げているのです。
もしも、家具だけからフンが出てきているのなら、家具を処分することで被害を食い止めることができます。しかし、住宅からフンが排出されているのであれば、その地域で乾材シロアリが拡がっていて周辺から侵入していると推測できます。
乾材シロアリは早急な対処が必要
アメリカカンザイシロアリをはじめとする乾材シロアリは、茶色い砂粒状のフンを室内に排出するため被害に気づきやすいシロアリです。
そのため、気づいたらすぐに対処することで被害を最小限にすることができます。「これって何の粒だろう?」と思いながら何も手を打たないでいると、被害はどんどんと進行してしまいます。
私自身、今までに住宅の様々な場所からフンが排出されるような悲惨な現場をたくさん見てきました。
茶色い粒を見つけたら早急に対処を。
というのが乾材シロアリ被害拡大を食い止めるためにも大切な考え方です。
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日本在来のシロアリのフンは乾材シロアリとは異なる
日本に生息するヤマトシロアリやイエシロアリは、自分たちの柔らかいフンを土などと混ぜて構造物を作るため、乾材シロアリとは全く違うフンを排出します。つまり、「我が家では粒状のフンなんて見たこと無いからシロアリはいないだろう」と考えてしまうのは間違いなのです。見た目は土を固めたトンネル状の構造をしており、木材に硬い土が付いていればシロアリ被害を受けている可能性が高いと言えます。